カルナザル戦記ガーディアン

漫画感想記32冊目

文明紀元歴、一四二七年。カルナザル二十八の文明諸国の中でもカルナ王政国は天才科学者テラス=ラングが造りあげた二体の巨大機動騎兵"大地の女神(カイン)" "天空の王神(クロノア)" そしてカルナ最終兵器と呼ばれる未知の兵器によりカルナザル最強の勢威を誇っていた。しかし、カルナの丞相ラガンはカルナザル支配の野望を抱きカルナ王を暗殺。武装侵略国家ラガンを打ち立てた。ラガンの勢力は周りの諸国都市を次つぎとのみ込み、その脅威は帝都ガルシアを離れた辺境をも脅かしていた…… カルナザルはその平和な時代に別れを告げなければならなかった…… 【冒頭プロローグより引用】

登場人物

ドナ

12歳の少年、ドナ。10年前のカルナ内乱で両親を亡くし、大柄な老人テラス=ラングに拾われ真っ直ぐな子に育つ。人を助けるためであれば危地であろうと臆することなく飛び込み、ラガン辺境軍に追われる少女、エルタを助けたことで大きな運命の渦に巻き込まれる。少年ながら運動神経は抜群に高く、地の利を活かす戦い方を心がけるなど頭の回転も早い。

エルタ

カルナ王族の姫君、エルタ。ラガンによって滅ぼされたカルナ王家の遺児であるため、ラガン国から執拗に狙われ、赤子の頃よりカルナ城兵だった者たちと逃亡生活を続ける。逃亡生活の中で深い尊敬を集めた母親のエスタを1年前に病で亡くし、元カルナ城兵たちはエスタの子であるエルタを守るため死力を尽くす。過酷な環境で育つが、心の優しさと芯の強さを感じさせる性格に育つ。荒廃したカルナザルをなんとかしたいと考え、ラガンの中央帝都、ガルシアにドナと共に向かうことを決める。

テラス=ラング

ドナの育ての親、テラス=ラング。その正体はカルナ王国出身の天才科学者であり、遥かに優れた科学技術をカルナザルにもたらすが、造りあげたカルナ・ガーディアンのカインとクロノアはカルナ内乱でラガン陣営に奪われ、カルナザル全土に戦火をもたらしてしまう。自らの生み出した兵器に恐れをなすと、赤子のドナを抱えながら逃亡し、カルナザルの表舞台より消え去る。多くの人を死なせてしまったことで罪の意識に苛まれながらの逃亡生活であったが、ドナの無邪気な笑顔に救われる。

ジャカン

ラガン辺境軍の司令、ジャカン。ラガン国の先王の弟であり、兄とは次期王の座を譲られる密約を交わしていたが、当時13歳のトーラに王位を奪われる。トーラは亡き王の遺言状と、強大な武力を誇る王室三闘士が後見となり、ジャカンは辺境軍の司令の座に左遷される。左遷されてなおジャカンの野心は衰えておらず、中央への復権及び皇帝の座を奪うため、カルナ王家の遺児であるエルタと、失ったと思われていたカルナ・ガーディアンのカインを手に入れようと目論む。目的のためであれば手段を非常な性格の持ち主。

ロボット要素

カイン

カルナ・ガーディアン、大地の女神(カイン)。天才科学者テラス=ラングが造りあげ、カルナ王国の守護神と謳われた機動騎兵。カルナ内乱でラガンの手に落ち、カルナ王国を滅ぼし、何十万という人間を殺した殺戮兵器と化す。暫くはラガンの手にあったが、輸送中に南の谷に墜落。輸送船の乗員は全滅し、カインも失われたと考えられていたが、墜落したカインを見つけたテラス=ラングとドナの手によって洞窟に隠されていた。墜落で失ったと考えられてから10年の時を経て、ドナの手によってラガンに敵する存在としてその姿を再度現す。主な攻撃方法は肩部に数門搭載された熱線砲と、掌から出現する長大な剣によるもの。肩部に搭載された熱線砲は量産型の機動歩兵に搭載されたものとは比べ物にならない桁外れの威力を持つ長射程兵器。長大な剣は大地の剣とも称され、超大型の戦闘空母を真っ二つにしてしまう。その他にも反重力磁場を展開することも出来る。反重力磁場は周囲の機体を無差別に破壊し、その余波は地形を根こそぎ抉ってしまう。また、反重力磁場は局部に展開しシールド粉片を散布することで大型砲門の直撃にも耐えうる盾にもなる。動力は太陽の光をエネルギー源としており、夜間や暗い場所では出力が低下する。特異性はそれだけに留まらず、搭乗する者が一切おらずとも動き、感情のようなものを持っているためか、度々コントロール外の行動を起こす。

クロノア

カルナ・ガーディアン、天空の王神(クロノア)。カインと並び立つ存在であるが詳細は不明。現在はラガン皇帝であるトーラの元に存在する。

機動歩兵

機動歩兵。(画像の機動歩兵は)ラガン辺境軍で使われるもの。高速移動時は地面より浮いている様子が伺えるため、動力には反重力動力が用いられていると思われる。武装は頭部の口に当たる部分に熱戦砲、腕部掌部分に砲門が搭載されいてる。ラガン辺境軍は辺境諸国と反乱軍の討伐を主目的とするためか、本国で使われる機動歩兵のものより出力は劣っている模様。

作画

30年以上の前の作品で絵柄にも時代を感じます。ハードな展開の作品ながら親しみやすさを感じられる絵柄です。

メカの作画は親しみやすさより近寄りがたさを感じるかもしれません。線の多いデザインのロボが殆どで、描き込みの量も凄い。1ページあたりの情報密度は相当なものです。

カルナ・ガーディアンの全体像が描かれているカットは少なく、巨大さを感じるカットが多いです。全体が描かれているページから全体像を把握しておくと、局部のカットに描かれている事柄が理解しやすいでしょう。

描き込みの多さはメカだけでなくキャラもしっかり描かれており、キャラデザも親しみやすいため総合的な作画の満足度は高いです。

雑感

本作は今より30年以上も前に発表された未完の作品です。しかし、現在でも名作と言った評価や、続きを読みたい作品として名前を挙げる人もいるファンタジー作品です。

本作は1巻しか出ていません。しかもこの1冊は壮大な物語を巡るための扉(序章)でしかありません。しかしながら、この1冊からは続きを切望させるだけの力を感じさせ、名作となり得るだけのポテンシャルがひしひしと伝わってきます。しっかりと作り込まれ、濃厚なファンタジー要素を味わえます。それだけに続きを求める声や、スケールの大きさから名作(になりうる)作品として名を挙げるのだと思われます。

同時にポテンシャルはあるものの多くを語るのが難しい作品でもあります。1冊だけなので続きを想像しても妄想の域を出ません。細かい考察にも大きな展開が幾重にもあると考えれば無駄と言えるでしょう。本作を読むことで出来ることは壮大さを感じることだけです。

大きな期待を持って本作を読むことをオススメしません。読み終わったあとに持つ希望は叶うことがないからです。それでも、この大きな物語の序章を知ることが無駄と断ずることは出来ず、知られることなく消える作品だとは思えないので、情熱と冷静の間くらいの気持ちの持ちようで読んでほしいです。

作品データ

カルナザル戦記ガーディアン
鷹城冴貴
集英社 ジャンプ・コミックス 1988/11







100

表紙と外部リンク

カルナザル戦記
1988年11月発売
0件のコメント
コメントを書く