トップをねらえ! NeXT GENERATION

漫画感想記46冊目

銀河系宙域戦より400年後、地球帝国は銀河連邦とシリウス同盟に二分され、人類文明は長い戦乱の中で衰退していった。銀河連邦とシリウス同盟との領土戦争は膠着、一時的な平和の中、両勢力はあゆみよりを始めていた。沖縄宇宙高校に通いトップ部隊入りを目指す少女ハヤミマリナは、ひょんなことからマイクロガンバスターを手に入れ、アラシジュンとともに、シリウス星地底に封印されたグレートガンバスターを復活させてしまう。時を同じくして全滅したはずの宇宙怪獣が出現。地球圏では凍結艦隊が復活、タシロ軍神のもと動き出す。生活圏を宇宙の星々に広げた人類に未曾有の危機が迫っていた!【下巻165pより引用しつつ改変】

登場人物

ハヤミマリナ

銀河連邦軍付属沖縄宇宙高等学校1年、ハヤミマリナ。15歳。ダジャレが好きで常にダジャレを考えるお気楽少女。遅刻の常習犯だったり、ボケにボケを重ねるなど未熟な面が目立つが、正義感は強く、他人のために命を懸けることを厭わない。訓練中のミスで倉庫の掃除を命じられ、倉庫に眠るマイクロガンバスターを偶然発見したことで、グレートガンバスターを巡る争いに巻き込まれる。特段優れている部分は見当たらないが、頑丈さが取り柄で、耐G適正が高いとのこと。

アラシジュン

マリナの学友、アラシジュン。18歳。見た目こそ優等生然とするが、内面はわがままで過激。訓練用の戦闘機に勝手に実弾を搭載するなど危険な発想をし、マリナとペアを組んだ際には火器管制を担当しているにも関わらず、後先考えずに攻撃してしまう。マリナと同様に罰で倉庫の掃除を命じられ、発見したマイクロガンバスターに乗り込んだことで、望まない運命に翻弄されてしまう。

ムラマサスズコ

マリナとジュンの友人、ムラマサスズコ。16歳。愛称はスズりん。マリナ、ジュン、スズコの三人で動くことが多く、ジュンの本性を正確に理解している数少ない人物。トラブルメーカーである二人に巻き込まれて叱られるが、一番まともな性格をしており、オペレーターとしてブレーキ役とサポート役をこなす。ガンバスターのパイロットとなったマリナとジュンを扱える者が他におらず、二人の指揮はスズコに一任されることに。

タクナ・セドウ

シリウス人のタクナ・セドウ。グレートガンバスター起動の鍵となるマイクロガンバスターを探すため、敵である銀河連邦の戦艦、トライオンに忍び込む。鍵の捜索中にマリナと出会ったことでお互い一目惚れし、意識する間柄となる。眉目秀麗であるが、髪の毛はカツラで、カツラの下は綺麗な禿頭。そのため、マリナからは若ハゲ様と呼ばれる。シリウス軍での階級(?)は僧尉。鍵であるマイクロガンバスターの所在を突き止めた功績で青の称号と洗礼を受ける。愚直な性格であるため、義に反する命令には抵抗を見せる。

ユング・フロイト

銀河連邦初代大統領、ユング・フロイト。2245年、宇宙怪獣を撃破してから200年の時を経て地球圏に帰還。地球帝国からシリウス同盟と戦うために再編成の命令が下るも拒否すると、クーデターを起こして地球帝国を崩壊に追いやる。その後、かつて地球を救った功績から、新たに誕生した銀河連邦の初代大統領に推され、その任を受ける。銀河連邦とシリウス同盟との戦闘は続き、英雄の務めとして自ら戦うつもりでいたが、タシロの計らいでノリコとカズミのクローンにシズラー黒改を譲り、一線を退く。クローンとはいえ友人だけを戦場に送り出す苦渋の決断をしたのは、ノリコとカズミにおかえりなさいと言うためであった。その後再び冷凍睡眠に入り、ノリコとカズミの帰還に合わせて目覚める予定であったが、宇宙の危機に際して緊急解凍される。マリナとジュンの二人を鍛えるため、ふくめんコーチXを名乗り二人の前に現れる。

タシロ軍神

エルトリウム艦長、タシロ軍神。銀河中心殴り込み艦隊を率い、地球帝国を崩壊に追い込んだ張本人。現在ではクルーから軍神の二つ名で呼ばれる。地球の絶対防衛ライン上に存在する2400隻の凍結艦隊を掌握し、銀河連邦及びシリウス同盟に強烈な睨みを利かす。また、有事の際はユングより先に解凍されていると思われ、手際の良さをユングから称賛される。

ロボット要素

マイクロガンバスター

バスターマシンの改良発展縮小型、マイクロガンバスター。大きさこそ通常のマシーン兵器よりだが、性能はくらぶべくもない。マイクロバニシングモーターを積んでることからリトルガンバスターとも呼ばれ、起動のための電力を取ろうとしただけで戦艦が電力不足に陥ってしまう。旧世代のロボット兵器は、マリナたちが生きる時代では大変珍しいとされ、トライオンβの中に無傷に近い状態で眠っていたが、艦長含め誰も存在を知らなかった。マイクロガンバスターは人型形態から戦闘機形態の、バスターフライヤーへと変形が可能である。バスターフライヤー時の主武器は機首両側面に備えられた二門のバスターバルカンビーム。人型形態時は腕部装甲内に格納されたトマホークが使用可能。詳細は不明であるが理力を制御する能力を持つようである。

グレートガンバスター

旧科学の史上最強兵器、グレートガンバスター。バスターマシン4号が上半身、バスターマシン5号が下半身となり、合体することでグレートガンバスターとなる。バスターマシン単機でもバスターバリヤーを展開可能。シリウス同盟の本星に合体した姿で存在したが、マイクロガンバスターが起動機として必要となるため、起動することが叶わなかった。起動のためにマイクロバニシングモーターを積んだマイクロガンバスターが必要なことからも出力はとても大きく、宇宙を丸ごと圧縮したよう、と例えられる。武装は初代ガンバスター同様に非常に豊富。頭部にグレートバスターウルトラスーパービーム(バスタービーム)を搭載。星すら飲み干す重力波を打ち消し、一撃で2億近い宇宙超獣を消し去る。指先にバスターミサイル。脚部装甲内に長剣、バスターブレードを格納。腕部装甲内に電撃兵器、バスターコレダー。バスターブレードにバスターコレダーの電撃を流して突き立てれば、バスターサンダーアタックという攻撃方法になる。必殺技は、ジャコビニ流星ウルトラ反転イナズマキック。

シンダラ

タクナの乗艦、シンダラ。理力で操り、遠隔で呼び出すことも可能。装甲にあしらわれた神聖文字(表意文字?)は文字そのものが理力として機能する。防御力に特に優れ、魔法陣障壁はマイクロガンバスターの光線兵器にも耐えうる。理力で念波を操作し、龍の姿に変化して攻撃をする。龍の姿では肉弾戦を得意とするだけでなく、魔道追跡光弾(マジックチェイサー)、熱球光弾などの遠距離攻撃も行う。

エルトリウム

銀河中心殴り込み艦隊旗艦、エルトリウム。全長は70kmにも達する。現在では失われた旧科学の粋を集めた戦艦。単艦で銀河連邦及びシリウス同盟を圧倒するだけの武力を持ち、2400隻存在する麾下の戦艦はどれも強力。覇を競いあう銀河連邦とシリウス同盟のどちらの陣営にも与さず、銀河中心殴り込み艦隊は地球の衛星軌道上、絶対防衛ライン上に凍結される。しかし、宇宙の危機に際すると、凍結艦隊を率いて再度戦場に姿を現す。かつてと異なり、シリウス人のクルーも多数乗り込み、理力兵器を使いこなすため、かつて以上の戦闘力を持つものと思われる。また、エルトリウムのメインコンピューターはかつての副長が務める。コンピューター化したことで思考能力が1850%に強化され、冷静な判断による助言をタシロ軍神に伝える。

作画

メカの作画は少し苦労している感があります。形に関してはほぼ完璧で及第点以上なんですが、大きさが若干ながら伝わりにくいです。しかし、人型メカ以外の戦闘機や戦艦の作画に関しては強い魅力が備わっています。

アニメキャラの漫画絵への落とし込みは完璧に近いです。自分が持つイメージとほぼズレがなく、生き生きと描かれています。

キャラ紹介では特殊な表現の絵を使いましたが、タシロ軍神もご覧のようにアニメとのズレを感じさせないものです。メカの作画も十分に優れているのですけど、それ以上にキャラの作画が抜群に上手い。コミカル調の絵が多いことから堪能は出来ないものの、安定感と質の高さを感じられることでしょう。

設定資料が多く載っています。設定資料に書かれている設定の多くは漫画の方には出てきません。漫画を読むだけではわからない情報がたくさん載っているので読み応えがあります。また、画像のメカ類も(勘違いでなければ)勿体無いことに本編の方には出ていないので、設定資料でだけ味わえるものになります。

雑感

起きている事件や設定はトップをねらえ!を引き継いでいると言えるでしょう。しかし、ノリが軽い。アニメ本編にも軽い部分はあったと記憶していますが、その軽い部分のノリのみで作られた作品というのが本作の印象です。

作品のノリが軽いために勘違いを起こしそうですが、本作で起こっている事件はシリアスです。シリアスでありながらも、悲壮感や緊迫感は薄く、最終決戦もイマイチ盛り上がりに欠けてしまっているのが本作の残念なところです。また、最終決戦が最後まで描かれておらず、中途半端なところで未完となっているのも読み味の悪さにつながります。

ただし、救いもあります。下巻の最後に原作者さんのインタビューが載っており、その中で作品のオチが語られています。このオチが個人的にはとても魅力的に感じたものであるため、未完であることの不満はそれほど感じませんでした。

漫画だけでは間違いなく未完だけど、真相の多くは作中で語られており、オチの部分は文章で補完されているので、もやもやはそれほど残りません。もちろん、漫画だけで完結していれば理想的ですが、時間が空いた中での初単行本化を迎えた作品の落とし所としては及第点ではないでしょうか。

本作は間違いなくトップをねらえ!ファン向けの作品です。トップをねらえ!を知らずに読めばその軽さに落胆することでしょう。しかし、しっかり読めば軽いだけの作品ではないこともわかります。正面から向き合うだけの忍耐力を持って触れることをオススメします。

作品データ

トップをねらえ! NeXT GENERATION
そうま竜也
メディアワークス 電撃コミックス 2007/3 ~ 全2巻
トップをねらえ!の続編となるNeXT GENERATIONシリーズの一作
1989年頃にコンプティークで連載され初の単行本化は2007年となる







100

表紙と外部リンク

トップをねらえ!NeXT GENERATION 上
2007年3月発売
トップをねらえ!NeXT GENERATION 下
2007年3月発売

余談(ネタバレ注意)

余談です。雑感で書いてることと被るのでこちらでやります。

もう一つのNeXT GENERATIONが硬派な作りだったために、本作は軟派な作品となったのでしょう。しかし、もう少しシリアスは欲しかった。話のスケールが大きい割にノリが軽く、スケール感が狂うというか、ギャグ漫画のような受け取り方になってしまった印象です。個人的にはこのスケール感という言葉が本作の全てだと思います。今回じっくり読んで思ったのは、悪い作品ではないということです。設定は面白い。物語の内容も面白い。解決方法が軽すぎるためにちょっと誤魔化されていたというか、読み込んだことで面白い話だと感じたたわけです。実は以前に一度読んでおり、その時は軽さに面食らったというか、正直な話面白さが感じられなかったけど、今回じっくり向き合ってみて悪くないと思ったのは意外でした。

それともう一つ勿体無いと思ったのが、設定資料に載っている設定があまり使えていないことです。本編に出てこなかったメカも含めて魅力的なんだからもっと出してほしかった。スケールの割にミニマムな作りだったから世界観の広がりを感じられなかった。理力というオカルトチックに感じる新設定が目立つけど、科学技術が衰退しているからこそのおもしろ設定が使われていないのは勿体無いです。

あと、おまけでもう一つ微妙に感じたのが、グレートアトラクターが喋り過ぎで小物感が強かった。物語は凄くわかりやすくなったけど、喋りすぎているために軽いというか、謎が弱くなってしまった印象です。宇宙怪獣の不気味さって何を考えているのかわからないところにあったと思うので、2つの意味で読みやすくなってしまったなと。

一応良かった点も書いておくと、圧倒的に絵です。ギャグ調に崩さている場面が多いので伝わりにくいですが、漫画絵としては相当です。人型メカは大きさを描くのに苦労した感じがありましたが、その他は上手すぎます。戦闘機、戦艦、背景、表情、アクション、とにかく全部が上手いです。派手さに欠けるのでインパクトはそれほど感じないでしょうけど、とにかく読みとりやすかった。

0件のコメント
コメントを書く