漫画感想記25冊目
時は日本と清国の間に緊張の高まる明治時代。古代中国の伝説に伝わる巨大な機械人形……「超機人」の噂を調べるべく、清国へ渡った大日本帝国陸軍軍人・稲郷隆馬は、実在した超機人を巡る人智を超えた戦いへと巻き込まれていく……「スーパーロボット大戦OG」の人気メカ・龍虎王と虎龍王を巡る壮大なドラマを描いた、伝説のスピンオフコミックが時を経てここに復活!【電撃版裏表紙より引用】
登場人物
稲郷隆馬
大日本帝国陸軍大尉、情報部所属、稲郷隆馬(トウゴウ リュウマ)。示現流の剣術の達人で実直な性格の青年。超機人調査の命を受けて清国に潜入するが、軍部では超機人の話を与太話だとしか捉えておらず、厄介払いの命令であった。超機人を巡る争いの中で超機人、龍王機の操縦者となるが、超機人の操縦者に求められる強念はなく、命を代償に龍王機を動かす。
文麗
蚩尤塚(しゆうづか)の守人、文麗(ウェンリー)。格闘術だけでなく暗器を使うなど複数の武芸を身につける。蚩尤塚では超機人は災厄をもたらすと伝えられており、超機人の起動阻止に躍起になるも発掘に来た大英帝国軍に捕まり、拷問を受けていたところを隆馬に助けられる。当初は日本人ということで隆馬に反発していたが、虎王機の操縦者に選ばれ、共に戦ううちに深い絆をつむぐ。隆馬同様に強念は無いとされるため虎王機の稼働に命を削る。
ジェイベズ=グリムズ
大英帝国の軍人、ジェイベズ=グリムズ。男爵位を持ち軍部での階級は少佐。グリムズ財団の当主であり、軍を私物化する死の商人とされるが、大英帝国女王への敬愛の念も持ち合わせる。また、西洋刀の使い手で隆馬と互する腕前。清国には超機人発掘のために赴き、蚩尤塚から雀王機と武王機の発掘に成功する。
V・B
独逸の諜報員、V・B。チャクラム使いの美しき女性。超機人発掘の裏で暗躍する謎の組織、バラルを打倒するために隆馬と文麗に協力する。バラムに深く関わる謎多き男、孫光龍(ソン ガンロン)を執拗に追う。
デヴォラ
バラルの神に仕える、デヴォラ。超機人発掘のためにグリムズを背後から操り、孫光龍の計画を推し進める。孫光龍には上司という以上の敬愛の念を抱いており、孫光龍が入れ込むV・Bにはただならぬ感情を持つ。傍らには蚩尤塚を守る偃の一族に連なる老爺、偃師(エンシ)を引き連れ、龍王機と虎王機を従えるため、念者の魂を詰め込んだ魂力筒のテストをする。
ロボット要素
龍虎王
激燃超機人無敵蒼龍、龍虎王。四神の超機人、龍王機と虎王機が合体した姿。龍王機と虎王機は蚩尤塚の地中で眠りについていたが、先に掘り起こされた雀王機と武王機の起動に呼応し、目覚めの刻を迎える。目覚めを迎えた龍王機は破邪の意思を持つ隆馬と契約するが、隆馬には超機人を動かすための強念がなく、本来は念動力で動かす五行器を魂力、つまり命そのもので動かすことになる。真なる覚醒には五行器を輪転させる必要があり、魂力を吸いすぎると隆馬が干からびてしまうため、龍王機自らが力を抑制している。龍虎王になった際の武器は、尾部の先端にある玉を変化させて出現させる龍王破山剣。その他にも術符に封じられた72の術を使いこなす。合体前の龍王機も高い戦闘力を誇り、主な攻撃は火を吐く、龍王火炎。喉元の逆鱗に触れると激しい怒りを見せるが、普段の龍王機は冷静で、虎王機と対照的な性格をしている。雀王機と武王機は傷付いた状態で埋まっていたが、龍王機及び虎王機は操縦者がいないだけでほぼ完全な状態で埋まっていた。
虎龍王
咆哮超機人最強白虎、虎龍王。虎王機が胴体部に龍王機を取り込むことで虎龍王となる。虎龍王は神速を誇り、主武器の名も神速槍という。必殺技は神速から繰り出される無数の打撃、虎王乱撃。合体前の虎王機の特徴としては自尊心が極めて高く、相手が格下と見ると龍王機との合体を拒絶する。龍王機と違い術は一切使えないという弱点を持ち合わていたが、龍王機より72の術の内の一つ、身分身の術を譲り受ける。打撃以外の攻撃は吠えることによる、虎王咆哮。
雀武王
超機人、雀武王(じゃくぶおう)。雀王機と武王機が合体した姿。雀王機と武王機は傷を負ったまま地中に封じられ、発掘した大英帝国軍は蒸気補機と特殊阿片筒を機体の各部に埋め込むことで無理やり動かす。特殊阿片の影響により自我を奪われ、選ばれた人間以外にも動かせるようになっている。武装は右手には黒蛇刀、左手には武王機の甲羅、武鱗甲を装備する。黒蛇刀は伸縮自在の刀で、周囲の力を吸い込み溜めて放つことが可能。武鱗甲は強固な盾というだけでなく、近接時は打突武器、武王猛突(トータスチャージ)として、鱗を一点に重ねれば重責層武鱗甲となり最高クラスの防御力となる。また、鱗を拡散させることで反射武鱗甲となり、反射武鱗甲を相手の周囲に展開させることで拘束し、黒蛇刀に集めた力を放てば必殺技、五行獄(エナジー・プリズン)となる。
余談。大英帝国軍では雀王機をフェニックス、武王機をトータスのコードネームで呼ぶ。また、雀王機は朱雀機、武王機は玄武機と表記され、合体後に名称がそれぞれ改められた。
巫支祈
デヴォラが念で操る無人の妖人機、巫支祈(ふしき)。胸を叩くことで出現する鉄球状の武器を振り回す。攻撃方法はシンプルであるが、単純な戦闘力は超機人に匹敵する。必殺技は大量に発生させた鉄球状の武器を飛ばす、奇跡大魔弾。
作画
キャラの作画にも魅力はありますが、本作はメカの方に魅力がありすぎるので今回はメカの画像山盛りでお送りします。
本作のメカは直線的なものだけでなく曲線的(生物的?怪物的?)なものも多くあり、そちらの作画の質も高いものになっています。
ケレン味が強い絵柄です。とにかく一枚一枚のインパクトが強く、終始迫力のある絵で戦闘が描かれています。
雑感
本作はスパロボシリーズの外伝作品となります。2003年に発売された双葉社版ではスパロボαシリーズの前史として、2011年に発売(再販)された電撃版ではスパロボOGシリーズの前史とされた作品になります。
そして、本作は双葉社版にしても電撃版にしても単体では未完作品です。第一部と第二部の二部構成で、第一部は1巻と2巻の半分まで使いしっかり終わっているのですが、第二部はぶつ切りのまま放置されていました。しかし、2017年になって完結編が発売されるに至り十数年越しでの完結を迎えています。今回の感想記は完結編と第二部の内容を含まず、第一部だけの感想を書いて、第二部と完結編の内容は次回に触れる形にしています。
本作はとにかく戦闘、戦闘、戦闘と戦い続けの作品です。スパロボシリーズのスピンオフであるため、スパロボを知っていれば違和感を感じずとも読めるのですが、単独で見ると世界観や物語の説明がもっと欲しかった。
スパロボを知っている人ならば知っていることでしょうが、龍虎王の存在自体はスパロボの中でもかなり異質です。新しい技術や異星の技術で作られた最新鋭のロボットとかではなく、遺跡から掘り起こした太古のロボットというもので、技名や単語なんかも特徴的なものがあります。本作の舞台は1900年前後ということで、スパロボ作品の時系列から見てもはるか昔という感じがありますし、本作に出てくる単語も五行器とか四霊とかかなり特殊なものばかりです。そういった点では世界観や設定面の独自性はよく出ていますが、戦闘を少し削ってでももっと時代背景や設定の掘り下げをしていると、単独作品としての価値はもっと上がっていたと思います。
本作はスパロボを知らなくてもおそらく楽しめますし、熱い物語と迫力の戦闘シーンだけでも十分に魅力的です。ただ、それ以外の面白さが読み終えた時に残っているかは疑問です。駆け抜けるように始まり駆け抜けるように終わるので、スパロボの知識を持ち合わせる身としてはもっと魅力を引き出せたのではと思います。
作品データ
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100
表紙と外部リンク
余談
今回感想を書くにあたって番外編が追加されているということで電撃版を買いましたが、元々双葉社版を持っていましたので、ついでに両版の比較をしてみようと思います。
双葉社版と電撃版ともにラフスケッチ集が載っていますが、収録内容は大きく違います。双葉社版は主要キャラとメカのイラスト、電撃版はサブと第二部のメカイラストが主になっており、掲載内容が一切被っていません。第一部の主要ラフは殆ど双葉社版に収録されており、電撃版だけだと第一部に関しては薄く感じるかもしれないです。
電撃版で新たに追加されたのは巻頭のカラー口絵、巻末の4コマやゲストイラスト、そして目玉の番外編となります。番外編は36pとなかなかの量です。話の内容としては第一部と第二部の後のエピソードとなっているので、流れで読むと結構違和感があります。一度気持ちを切り替えて読みましょう。
掲載内容の違いはこれぐらいでしょうが、個人的には紙質と印刷が一番の差異です。紙質は圧倒的に双葉社版が良いです。印刷の違いとしては電撃版はかなり濃い目で、双葉社版はあっさり目です。紹介の画像でも分かる通り、本作はかなりケレン味を感じる画風であり、画面(ページいっぱい)にびっしりと書き込まれており、パッと身では電撃版の方がインパクトありますが、じっくり見るならば双葉社版の方をオススメします。ちなみに電書版もサンプルで確認した限りではかなり黒いので、印刷の質というか入稿したデータの違いといったところなのかな。
上の参考画像はスキャニングした環境によって異なってくるので、差のみに注視してください。実際の紙で見てもこれぐらいの濃淡があるということです。
結論としては、最初に買うならなんだかんだで電撃版がオススメです。番外編も追加されているので損した気分になりません。読んで気に入ったら双葉社版を追加で手に入れるぐらいで良い感じではないでしょうか。
余談は以上になります。次回は完結編です。
古代中国に伝わる伝説の巨大な機械人形「超機人」……人知を超えた力を持つ超機人を巡る戦いは、明治時代・日清戦争前夜の清国・蚩尤塚を皮切りに、第二次世界大戦の緊張が高まる昭和へと時代を超えて続いていた。超機人を狙う謎の結社「バラル」に両親を殺された蚩尤塚を護る一族の少女・飛麗…
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