流星機ガクセイバー 【漫画版】

漫画感想記15冊目

『地球は狙われていた遙かなる昔から…遥か―太古とも呼べる昔から……』富士五湖研究都市、この地に隕石が降り注いだことが一つの契機であった。大気圏で燃え尽きなかった隕石、その正体は地球の科学では説明の出来ないブラックボックスの塊だったのだ。隕石の正体を解明するため国連によってB.B.P(ブラックボックスプロジェクト)が立ち上げられ10年の月日が経ったある日、その事件は起きた。隕石の真上に突如として円盤状の飛行物体が現れ、円盤に乗る異星人は地球の占有権を主張し、地球を賭けた決闘を行うというのであった。その場に居合わせた国際アカデミア学園に通う8人の学生は異星人と戦う力を持った巨大ロボット『ガクセイバー』の搭乗者に選ばれてしまい、否応もなく地球を守る戦いへと身を投じるのだった。【最初の一文は本編から引用残りは制作】

登場人物

吉村学


国際アカデミア学園生徒会長、吉村学(ヨシムラ マナブ)。宇宙飛行士になることが少年時代からの夢で高校3年生の現在も変わらない。羽柴の講義に出たがためにガクセイバーの搭乗者の一人になってしまう。ガクセイバーの搭乗者は一癖も二癖もある人物が揃っており、癖のあるメンバーを学園生活と同じく齟齬の無いよう纏めあげる苦労人である。 親友である杉山は下の名前で呼ぶが、その他のメンバーからは役職の会長の名で呼ばれる。

昭島里美


新体操部1年、昭島里美(アキシマ サトミ)。学と同じく羽柴の講義を受けたがためにガクセイバーの搭乗者となる。他の搭乗者はガクセイバーのパイロットとなったことに否定的であったが、里美だけは他人任せでなく自ら戦えることを喜ぶ。明るく誰とでも仲良くなれる社交的な性格。学の初恋の相手に似ていることから好意(興味)を持たれているが…。

羽柴当吉


原子工学と言語を専門とした高校の教師、羽柴当吉(ハシバ トウキチ)。講義の評判は悪いため受講する生徒の数は極めて少ない。単位を餌に学生を課外授業に連れ出してガクセイバーのパイロットに仕立て上げ、自ら地球防衛司令官と名乗るなど傍若無人な振る舞いが目立つ楽天家。

山田ヘレナ


宇宙物理学を始めとした23の博士号を持つ若き天才、山田(ヤマダ)ヘレナ。国連を母体とした組織B・B・P(ブラックボックスプロジェクト)委員会にガクセイバーの責任者として任命されるが、司令長官を自任する羽柴に容易に取り込まれてしまう。どうしようもなくポンコツな面もあるが、分析力は高く搭乗者に的確なアドバイスを送る。

ワーキュリー


遠く離れた星、プロキシマより現れた侵略者、ワーキュリー。地球の占有権を主張し、銀河決闘を申し込んだ最初の人物。銀河決闘後も地球に残ることでガクセイバーの戦いを見届けるつもりであったが、地球人に銀河の知識がなかったため助言を行ってしまい、結果的に直接関わるようになってしまう。

ロボット要素

ガクセイバー


流星機、ガクセイバー。10年前に地球に降り注いだ隕石の中に眠っていた全長62mの巨大ロボット。B.B.Pの管理下に置かれ、最先端技術をを用いて研究されていたが10年間何の進展もなく、偶然居合わせた8人の学生が8つのユニット(人の背丈の2、3倍はある石版状の物体)に接触したことで目覚めの刻を迎える。ユニットが8つあることから本来は8体合体のはずであったが、居合わせた一人、新菜のユニットが起動しないまま7つのユニットだけで起動してしまう。不完全な状態ながら基本性能は高く、搭乗者の強い意志に反応し新たな力が目覚めるなど潜在能力も未知数。機械的操縦モジュールが後付けで取り付けられ機械的な操作も可能であるが、思考による命令の方が優先される。固定武装は特に無く、手持ちの武器も片手斧しか存在せず、手足を使った肉弾戦を得意としている。

ガクセイバーの搭乗者は7人(+1人)。生徒会長、吉村学。1人きりの相撲部員、杉山高明。テニス部所属、スーザン・ウォーカー。生徒会書記、藤井由美。野球部エース1年、佐々木建吾。新体操部1年、昭島里美。スーザンの追っかけ、ジョージ・細井。彼ら一人ひとりに好みの戦い方があり、彼らの意思に応じて新たな武装がガクセイバーの能力で出現する。また、ガクセイバーには身を守るためのバリアーも標準装備されているが、搭乗者の一人である藤井由美の意思に応えることで、より強力で広範囲に展開させることも可能となっている。

ガルレオン


プロキシマ星のワーキュリーが搭乗する、ガルレオン。ガクセイバーより一回り大きい。主武装は大振りの曲刀。刀身に雷を纏わせた斬撃、ガルレオンライトニングが必殺技。その他に、ネビュラストームという衝撃波を繰り出す技もある。

ギィルガン


バーガス星のグルガンが搭乗する、ギィルガン。主な武装は長柄の槍。伝統と誇りを重んじる星バーガスでは、銀河決闘を前に闘いの踊りを舞い、戦う力を湧き上がらせる。

作画


原作アニメと比較どうこうは出来ませんが、キャラデザはしっかりしていて作画も凄くキャッチーです。特に表情、感情の描き方が漫画的で分かりやすく、個性がつかみやすいです。画像を見てもらうだけでなんとなくわかりますよね。


メカの作画について特筆すべきことはないです。本作のロボデザインは狙って外している部分もあるので、カッコイイロボとカッコイイロボが描かれているのが見たいというのであれば物足りないかもしれません。しかし、ロボデザインはこれはこれで味がありますし、作画の方も楽しむ上では十分です。


かなりはっちゃけた作品で、作品全体を見るとこんがらがっている印象があるのだけど、凄い受け入れやすかった。何故なのかを少し考えてみると、単純に話の構成が上手いということも当然ながら、親しみやすい絵柄とわかりやすい構図も一役買っているのだと思います。

雑感

作品のノリはかなりライトでバブリーなものです。しかし、主要人物の想いはしっかりとしています。その想いを重々しく描くことはなく、さりげない丁寧さで描いているのが印象的です。ライトだけど軽過ぎず、軽さがあるけどふわふわしていない、そんな不思議な感覚を憶える作品です。

そして本作は原作を知らずとも問題なく楽しめます。原作を知らずとも楽しめる作品ということは単純に作品として優れているということです。それだけにどうしても残念な問題が一つだけあります。それは未完作品ということです。

どうしようもなく未完な作品です。エンディングどうこうではなく、1つのエピソードの区切りがついておらず、読み終えると同時に「え、これで終わりなの」と呆気にとられます。実際には単行本化されていない雑誌掲載分も数話あるようなので、当然といえば当然ですが続きが想定された、ピリオドが打たれていないタイプの未完作品です。

未完であることを差し置けばかなり質の高い漫画です。ガクセイバーに搭乗する人物だけで8人、それ以外にサブキャラも複数いるのですが、キャラの個性がハッキリしていて、キャラ立ちが見事なまでに豊かです。読み終えた直後に今読んだのが本当に2巻分だけだったのかと疑問に思うくらい、自然と作品とキャラへの愛着が湧きます。

大きな物語ではないので部分部分でも十分楽しめますが、大きな伏線が回収されていないだけに楽しみきれない、楽しみ尽くせないことが残念です。それでも質の高いメディアミックス作品の1つとして名を挙げられてもおかしくないでしょう。

作品データ

流星機ガクセイバー
厦門潤
竹書房 バンブーコミックス 1993/5 ~ 全2巻
アニメ原作のメディアミックス作品
雑誌連載の未単行本化部分も存在(連載分を含めても未完結作品)







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表紙と外部リンク

流星機ガクセイバー 1
1993年4月発売
流星機ガクセイバー 2
1994年6月発売

余談

雑誌連載分を手に入れたので簡単に紹介してみました。ネタバレに配慮はしていますが、大筋はわかってしまうのでそれでもよければどうぞ。

15回目のおまけみたいなもの

ガクセイバーの未単行本化分を手に入れたので簡単に紹介してみようと思います。全部で3話分あるのですけど、纏めて紹介するとバレが激しくなりそうなので、ぼかしを兼ねて各話ごとの画像ダイジェストとしています。では、早速11話から見て行きましょう。 11話 【コミックガンマNo.12掲載】...

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