ブルーセンチネル

漫画感想記3冊目

第3次世界大戦後の地球を舞台に潜水艦影艶が大活躍!…超本格派海洋アクション巨編!!!【そでより引用】
20世紀後半、ヨーロッパを中心に起こった東側諸国の資本主義化を柱に、21世紀初頭にヨーロッパ経済共和国連が出現。米・露・欧の関係が微妙になっていた。これを“ノース・ポール・トライアングル”と呼び、北極を中心に第三次世界大戦が勃発した。長い大戦の末、大ドイツ帝国(旧ヨーロッパ経済共和連邦)が勝利した。ここに、地球は惑星規模の統一国家となり、地球協和連邦が樹立した。大きな痛手を受けた各国に対し大型船による物資供給が始まったが、それを狙う海賊が出没するようになった。いそぎ公海の安全を守るために組織されたものが“UNFES”である。【コミックス本文より引用】

登場人物

海原帝刃

海原帝刃(ウナバラ テイジン)。階級は一等海佐。21才にして潜水艦、影艶(カゲツヤ)の艦長を務め、多方面に渡る才能を持つことから天才と呼ばれる。皇族のみ使うことが許される「帝」の文字を名前に持つなど謎は多いが、性格は非常に穏やかで女性受けが良い。精霊石を盗んだ海賊組織、青潮の調査を任され、自身の生い立ちにも関わる事件へと見を投じることになる。

葵みゆき

葵(アオイ)みゆき。階級は二等海佐。優秀な頭脳と鋭いカンの良さが魅力であり、21才にして影艶の副長を務める。財閥の令嬢であるが、笠に着る行動は殆ど無く、帝刃の気を引くことを考えては実行に移す、アクティブな性格の持ち主。

エシリル・ユニ

エシリル・ユニ。階級は二等海佐待遇。父親は前大戦の英雄と呼ばれるほどの魔導法師であり、彼女もまた超一級の魔導法師である。常時は艦内において影艶の魔法補佐を務め、戦時は敵勢の魔法を打ち破ることが主な役目となる。

海原煌夜

海原煌夜(ウナバラ コウヤ)。前大戦の英雄、海原駿絵実篤(ウナバラ シュンカイサネアツ)の子であり、帝刃の実の兄でもある。帝刃とは真逆の燃え盛るような性格をしており、一つの事件を境に袂を分かつ。精霊石を強奪した組織、青潮と深く関わっているもよう。

ロボット要素

鳴人尚武

前大戦時に作られた傀儡兵(マスタースレイヴ)の、鳴人尚武(ナルヒトショウブ)。とてつもない戦闘力を秘めた存在であるがために、前大戦が終わると同時に廃棄される予定だったが、破壊することすら不可能であったので、現在は結界によって封印されている。

尚武は傀儡兵の中でも特殊な呪操兵と呼ばれる存在で、呪操兵は人との精神の融合を果たすことで本来の力を発揮する。その強すぎる力は忌み嫌われ、なかば呪われた兵器の扱いまで受ける。人工知能が搭載されており、君たる帝刃に対して非常に忠実なだけでなく、その他の人物に対しても丁寧に振る舞う。

詳細不明メカ

詳細不明なロボットっぽいメカ。左は青潮が所有している傀儡兵? 右は前大戦時の米軍の重機械化揚陸部隊の傀儡兵? 本来であれば、説明できないようなメカを持ってくるべきではないのだが、残念なことに、本作にはこれら以外にロボットと呼べそうな存在がいなかった。

影艶

(本作のメインメカ)ステルス対潜攻撃型潜水艦、影艶。精霊石を機関とした非常に珍しい潜水艦である。精霊石機関のメリットとして、高い静音性や省スペースなどが挙げられるのだが、一番のメリットは艦の自重を変化させられることにあり、自重の変化によって急速な潜航を実現している。また、影艶も尚武と同じく人工知能を搭載しており、人工知能のサポートにより、少数のクルーによって潜航させることが可能となっている。

作画

メカの作画はそれほど凝ってません。重厚ではなく至ってシンプル。見せ方がよく、把握がしやすいので、読む分には非常に読みやすい絵柄です。

人物の作画はいくつか問題があります。画像のような老齢の人物の作画は、皺の描き方に癖が強いので違和感を覚えます。幸いなことに、登場人物の殆どは美形なので、老齢な人物の描写及び登場頻度は低く、作品全体を通しての欠点にはなってません。

逆に、美形な人物だと作画は強みになっており、特に女の子の作画はとても良いです。90年代前半の作品で、絵柄としては一昔、二昔前なのだが、今でも可愛く感じるのではないでしょうか。

雑感

第一印象としては、世界観の作り込みの素晴らしさが際立っている作品だと思いました。主人公の周りは可愛い女の子だらけだし、作画の強みも間違いなくそこです。現在ならば美少女動物園と言われそうな作品ですが、設定面のおかげでチープさは感じず、読みやすいだけでなく読み応えもありました。

また、魔法と科学の融合というのは好きなジャンルでもあるので、個人的にはかなりツボな作りでした。呪操兵のように脳汁が出そうになるワードがあるのも良かったし、設定面の重さを可愛い女の子で中和できており、バランス感覚も優れています。作画の項では90年代前半の作品ということで、一昔前の絵柄と書きましたが、これもまた個人的にはかなり好きです。90年代なんてほんの20~30年前でしか無く、可愛いと感じる部分は現代でもそれほど変わっていないのではないでしょうか。

本作の明確な欠点は一つ。それはこの1冊で完結していないことです。本作は未完の作品ではなく、完結しているらしいのですが、続きが同レーベルから出版されておらず、作者さんの同人誌でしか纏められていないそうです。作者さんは残念なことに10年以上前に亡くなっており、同人誌の再販の可能性も無いでしょう。20年以上前の同人誌を探すにしても、20年以上前の雑誌を探すにしても、どちらも難しいことは間違いなく、続きを期待してコミックスを読むのは間違いであると断言できます。コミックス1冊だけでも結構楽しめることは間違いないですが、未完の作品では人に薦めづらいのも事実です。割り切って読めるのであれば、新たな発見に出会えるので、オススメできるのもまた事実ですけどね。

また、本作はロボット要素がかなり薄いです。下記の判定表を見てもらえればある程度わかるはずですが、巨大ロボではなく、搭乗もせず、描写頻度も低いです。ロボットモノというよりは海洋ミリタリー(潜水艦)モノなので、そこはお気をつけください。

作品データ

ブルーセンチネル
うらべすう
フランス書院 Xコミックス 1993/7/10 全1巻
AmazonだとR-18(年齢確認)の警告が出るが、本作にR-18要素は全く無いどころか昨今の週刊少年誌よりはるかに健全。また本作のどこにもR-18のマークは付いていないので出版社及びレーベルでR-18と判断されたのだと思う。

×

×



×


9

表紙と外部リンク

ブルーセンチネル
1993年6月発売

余談

完結編の同人誌を手に入れるのは難しいと書いたけどあれから手に入りました。物語の紹介はしておらず、ネタバレにならない程度に画像を貼り付けているだけですが興味があればどうぞ。

3回目のおまけみたいなの

ブルーセンチネル完結編の同人誌を(2ヶ月くらい前に)手に入れていたので画像ダイジェストでお送りします。 美味しそうなところから厳選して選んでみました。ギリギリネタバレにはなっていない部分で攻めてみたつもりなんですけど晒しすぎかな? この同人誌はコミックスの続...

0件のコメント
コメントを書く