神様ドォルズ

漫画感想記4冊目

故郷の村を捨てるようにあとにして、東京で平凡な学園生活を送る匡平(キョウヘイ)は同じ学部の日々乃(ヒビノ)に告白しようとした夜、惨殺死体を発見する。さらに「案山子(カカシ)」と呼ばれる超常の人形を操る、「隻(セキ)」の資格を持った妹・詩緒(ウタオ)が、彼を訪ねてきた。詩緒はかつて村で惨劇を起こし、同じく隻の資格を持つ阿幾(アキ)という青年が逃げ出したことを伝えるが、その時、二人は阿幾の奇襲を受けた。詩緒は一瞬の隙を突いて辛くも阿幾に勝利したが、阿幾は脱走してしまう。阿幾に部屋を破壊された匡平たちは、父親が同郷の誼で日々乃の実家へ世話になることに。しばらくは日々乃との平穏な同居生活が続くが、その平和は長くなかった。姿を消していた阿幾が、匡平の前に現れたのだ。しかし、そこに勾司郎という新たなる隻が登場、突然阿幾を攻撃する。今、神々の戦いが始まろうとしていた――【2巻あらすじより引用】

登場人物

枸雅匡平

周囲からは隔離された田舎村、空守(カラカミ)村出身の青年、枸雅匡平(クガ キョウヘイ)。村のしがらみを嫌い大学生となることを機に東京に出てきたが、村の因縁からは逃れることができず、案山子をめぐる事件に巻き込まれる。普段は温厚な性格をしているが、村の事が関わってくると激する事が多い。かつては玖吼理の隻であり、案山子の扱いは現隻である詩緒以上であった。

史場日々乃

匡平と同じ大学に通う大学生、史場日々乃(シバ ヒビノ)。阿幾との戦闘で匡平の住んでいるマンションが壊れてしまい、父親が空守村出身の縁もあって同居することになる。父親が語らないこともあって、日々乃自身は空守村のことをよく知らない。優しく芯の強い性格をしており、匡平や詩緒にまつわる異変の数々に巻き込まれるが、それまでと態度を変えることはない。匡平に好意を持たれているが、敢えてなのか気付いていない。

枸雅詩緒

匡平の妹で玖吼理の現在の隻、枸雅詩緒(クガ ウタオ)。空守村において隻は畏敬の念の対象となっており、幼い頃は匡平が隻で、詩緒は隻で無かったために、周囲の態度の急変に戸惑う。匡平のことをとても好いているが、背伸びをしたい年頃でハッキリとは口に出せない。隻としての腕前は匡平に遠く及ばないが、玖吼理と心を強く通わせる。

枸雅阿幾

暗密刀の隻、枸雅阿幾(クガ アキ)。枸雅一族の建市(タケイチ)の愛人の子で、母親に捨てられ空守村に来る。匡平の親戚というだけでなく、良き友人関係であったが、虐殺事件で二人の思いは離ればなれとなる。事件を機に匡平は強い感情を表に出すことを嫌うようになり、阿幾は人を殺すことに躊躇いをなくす。事件を起こしたことで村の座敷牢に閉じ込められたが、何者かの手引きにより脱走、匡平の前に姿を現す。幼い頃に見た匡平の力を高く評価しており、隻の資格を失った今の匡平を焚き付ける。

ロボット要素

玖吼理(ククリ)

枸雅家所有の案山子、玖吼理(ククリ)。案山子は単独で動くことはないが、案山子に選ばれた者である、隻が心を入れて操ることで隻の思いのままに動かせる。通常時は可愛らしく、戦闘力が低そうに見えるが、戦闘時になると右手に内蔵しているナイフ、目からのビーム攻撃を行うので戦闘力は高い。かつて、匡平が操っていた際の玖吼理は力が強すぎると恐れられるほどであった。現隻の詩緒は戦闘以外に人助けなどにも使い、玖吼理を善き神様としたいと考える。

案山子は全部で8体。枸雅家が所有する、玖吼理(ククリ)、迦喪建角(カモタケツノ)、弥隈利(ミクマリ)、暗密刀(クラミツハ)。枸雅家と並び立つ日向家が所有する、宇輪砲(ウワヅツ)、武未禍槌(タケミカヅチ)、禍津妃(マガツヒ)、火官土(カグツチ)。伝承では10体と伝えられるが、天照素(アマテラス)と常絶(トコタチ)の実体は確認されていない。壊れた案山子は器師(ウツワシ)と呼ばれる杣木(ソマキ)一家の手によって修理される。案山子のパーツは木材から作られており、カムノチと呼ばれる特殊な液体に木材を漬け込ませることで、人に感応する柔軟性を伴った木材へと変貌する。

暗密刀(クラミツハ)

枸雅家が管理する案山子、暗密刀(クラミツハ)。手の部分が大鎌になっており、他の案山子と比べると直接的な殺傷力が高く、接近戦に優れる。枸雅家では阿幾の異母兄、篤史(アツシ)を隻にする予定であったが、その場に居合わせた阿幾が選ばれる。その後、暗密刀を中破をさせる事件を起こしたことを好機と捉えた枸雅家により、儀式によって篤史に隻を移す。結局のところ篤史は暗密刀の隻の器にはなく、再度、阿幾の手に戻ることになった。

宇輪砲(ウワヅツ)

日向家管理の案山子、宇輪砲(ウワヅツ)。日向家の次代と目される勾司郎(コウシロウ)が隻を務める。案山子には人の目に見えない疑空間を移動する能力を持つが、瞬間移動ができるのは宇輪砲だけ。相手に認識されずに攻撃できることから、百発百中の宇輪砲と呼ばれる。

作画

アクションと日常が同居する作品で、アクションシーンにおいては迫力がありつつも読みやすいです。

日常の場面では戦闘がないこともあって、人肌を感じられる作画です。全てにおいてしっかり作られた作品で、人物の作画においても同じことが言えます。登場人物を身近に感じられる作画で、より物語に惹き込まれる要素となっています。

案山子が機械じみた外見ではないため、ロボット漫画特有の直線的な迫力は控えめです。反面、微妙な曲線の柔らかさがとてもらしく、作中での案山子の説明をよく表わしています。

雑感

名作や傑作と呼ばれる作品と断言して問題なさそうです。とにかく作りの上手さが際立っていました。物語の謎の部分であったり、主要人物の過去について、ストレスを感じないよう適度に小出ししてくれるので、とにかく読みやすいです。

紹介した以外にも多くの人物が登場しますが、一人ひとりのキャラ立ちも素晴らしく、必要な情報についてもほぼ全て描かれています。深淵とでも言うべき部分は匂わす程度にとどめられているので、想像して楽しむ余地もあります。

物語も作画も高レベルですが、唯一欠点となりうるのは巻数でしょうか。昨今の作品は長編になりやすく、12巻というのは長いどころか短い方です。それでも少し長く感じたのは、物語の核となっている事件が一つだからで、もう少し絞り込んで描いてもそれはそれで良かったのかもしれません。

テンション高くべた褒めして普通なら終わりですが、本作を全て読み終わった後はかなり寂しくなりました。作品の評価や質を落とすような終わり方ではないですけど、読み終わった後は暫く一人で考え込みたい、そんな気分になりました。この気持ちも全てひっくるめて傑作と呼びたい作品です。

作品データ

神様ドォルズ
やまむらはじめ
小学館 サンデーGXコミックス 2007/7 ~ 全12巻
12巻には多数のカラーイラストと短編1本が収録された特別版が存在
2011年にはアニメ化もされている







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表紙と外部リンク

神様ドォルズ 1
2007年7月発売
神様ドォルズ 2
2008年3月発売
神様ドォルズ 3
2008年9月発売
神様ドォルズ 4
2009年1月発売
神様ドォルズ 5
2009年7月発売
神様ドォルズ 6
2010年2月発売
神様ドォルズ 7
2010年7月発売
神様ドォルズ 8
2011年2月発売
神様ドォルズ 9
2011年7月発売
神様ドォルズ 10
2012年3月発売
神様ドォルズ 11
2012年9月発売
神様ドォルズ 12
2013年4月発売
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