漫画感想記18冊目
2035年、東京直下に実に112年ぶりにM8.7の大地震が発生した。耐震構造を持った当時の建物は耐えた…1度目は。日を置いた2度目の同規模の地震によって都市は壊滅的な打撃を受け、死者5千人、負傷者30万人、行方不明者1200人の死傷者を数えた。それでも、被害の状況を考えれば奇跡的に少ない数字であった。大震災から3年、復興の途にある日本で、癒えない傷を抱えた兄弟の物語の幕が開ける。【1巻冒頭の文章を引用しつつでっちあげ】 【1巻冒頭より引用し改変】
登場人物
風間敬介
バイク配達便のバイトをする19歳のフリーター、風間敬介(カザマ ケイスケ)。3年前の震災で両親を亡くし、唯一の残された肉親である兄は仕事にかこつけて一度も帰ってこなかったため、兄に屈託とした感情を抱く。幼い頃から出来の良い兄と、ロボット工学で有名な両親と比べられた影響で擦れた性格となるが、根は優しく、バイト先の社長や従業員のいづみには素直な面を見せる。
風間基樹
敬介の兄、風間基樹(カザマ モトキ)。大震災時、EXEF(イグゼフ)ロボトロニクスUSAの極秘開発計画に組み込まれていたため日本には帰ることができず、そのことで敬介との関係には軋轢が生じてしまう。異動で5年ぶりに日本に帰ってきたことを機に大切に想う弟との関係の修復を試みるが、不器用な性格と仕事の忙しですれ違いが続き思うようにはいかない。第8世代コンピューターの父と呼ばれる程の天才科学者であるが、おっとりとした性格から初対面の人間からは驚かれる。
葉山深雪
ムーバー開発主任、葉山深雪(ハヤマ ミユキ)。ムーバー開発のために風間基樹を日本に呼んだ張本人。機転が効く優しい女性で、弟と仲直りができない基樹を気遣い様々なアドバイスを贈る。
ロボット要素
EM-X1(エムスワン)
人型汎用戦闘兵器、コードネームEM-X1(エムスワン)。EXEF社内ではMOVER(ムーバー)と呼ばれる。EXEFロボトロニクスの時期主力商品として開発を開始。各種業務への転用を考え、汎用性の高さが追求された結果、人体を模した設計となった。人間のよき隣人となりうる民生用ロボットとして開発が進められたが、EXEF副社長、黒田重蔵(クロダ ジュウゾウ)の介入により、戦闘用兵器として各種武装が追加された。武装は2万ルクスの光を最長3秒間照射する、ブラインディングストロボシステム。手甲部から伸縮する、ヒートロッド。肩装甲内部に格納されているレーザー砲、ギガボルトシステムなど。
頭脳部分には当初は生体コンピューター、B-システムが使用され、疑似人格の開発を進めていたが、B-システム開発者の1人が開発途中で亡くなったことで、代わりに生体脳、B-マテリアルが使われる。その結果、発表会場で暴走し、その後逃走。暴走時に意思と感情の発露も確認される。
スレイプニル
ロボット戦車、スレイプニル。旧型のロボットであるが火力と分厚い装甲には定評がある。主武装は大口径のレールガン。
リベッルラ
護衛ロボット、リベッルラ。電磁波センサーによる索敵能力に優れ、機体下部に装備されたガトリング砲で標的を攻撃する。見た目通り装甲は脆い。
作画
メカの作画は抜群の安定感があります。読みやすさと描き込み量のバランスが丁度良く、じっくり見ても楽しめるし、物語を追うためにさらっと読む形でも楽しめます。
本作の主要ロボット要素であるムーバーは等身大サイズの存在であり、人とロボットが同画面内に描かれることが多いです。当たり前といえば当たり前のことですが、それらが同時に違和感なく描かれています。先程と同様のこととなりますが絵面のバランスが絶妙です。
作者の木村明広さんといえば艶っぽい女性の描写に定評があります(ありますよね?)。本作でもそこは変わらず、女性のバリエーションはあれど総じて艶っぽさがあります。そして、艶っぽいだけでなく可愛らしい絵も結構あります。
ちょいビジュアル系の入った絵柄で若干の癖はあると思いますが、キャラデザ然り、構図然り、描き込み量然り、作画の質はかなり高いので十分満足できるもののはずです。
雑感
小説が原作となる作品で、あとがきによると原作小説全3巻のうちの1巻の半分辺りまでのコミカライズとなるようです。当然ながら物語は全く終わっていないし、キリが良いところまで描かれているのかというとそうでもないです。
本作だけだと物語の入り口(起承の起)ぐらいまでの作品なので評価云々の話にすらなりませんが、絵の質が高いだけでなく、設定及び物語も噛み砕かれ、親しみやすさが感じられる作りになっているので、導入という意味では質の高い作品です。
漫画だけで楽しみたい人には向かず、小説を読む前のつまみ食い感覚で読んでみるのが一番楽しめる形かと思います。
作品データ
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