心に抱くは大刀か【岳飛伝3巻読了】

遅ればせながら読み終えたので感想を書いていきます。毎度のことながら未読の方への考慮はありませんので、お気をつけください。


大きく動きましたね。大きな戦はあったものの、(死亡フラグが立ちまくっていた)蘇琪の死以外は数字だけの印象があります。大きく動いたと感じた部分は戦後の処理からの流れですね。

大局的に見ると金と梁山泊の講和が大きいですが、自分が興味を惹かれたのは秦容の離脱と呼延凌が軍の総帥に立ったことです。

秦容と楊令は凄く似ていました。とんでもなく強いというのは勿論共通していますが、それ以上に作中での扱いが近かった。水滸伝終盤で楊令がさっそうと現れ活躍したように、秦容も楊令伝中盤から表舞台に出て暴れまわりました。そして彼らには共通して強力なライバルがいました。楊令であれば童貫、秦容であれば岳飛です。

志を貫くには童貫は討たねばならぬ存在であり、激戦の末に実際に討ちました。しかし、岳飛の場合は別に討つ必要がありません。童貫を討たれたことで復讐に燃えている岳飛であれば、障害となるので討たねばなりませんが、岳飛伝の岳飛は討っても討たなくても同じ存在となっています。

そんな状況で戦いとは別の闘いに赴くこととなった秦容がこれからどうなるのかかなり気になります。合わせ鏡の存在であった楊令は戦に生き、戦に死にました。秦容の冒険譚の行方や果たして、ですね。

そしてそして呼延凌が名実ともに梁山泊軍の総帥となりました。岳飛伝になってからの呼延凌は凄く魅力的です。楊令伝では控えめで抑えていたところが多かったので曇っていた印象もありますが、岳飛伝になってからは余計な遠慮がなくなり、人間的魅力が増しています。今回の秦容を送り出す時の話も器の大きさと果断さを感じさせてくれるものでした。

そういえば史進が呼延凌の陣に帰ってきた際に、双鞭の陣だ、的な事を言っていましたよね。実は自分が呼延凌に感じているのは、双鞭より大刀です。2巻の感想で書きましたが、呼延灼はちょっと堅くなりすぎているきらいがありましたが、呼延凌は割と柔らかく、包容力的なものが関勝に近い印象です(水滸伝ではかなり好きなキャラだったので勝手に重ねてる部分があるかもですが)。

梁山泊側はそんな感じで、次巻からは作品の核となるであろう岳飛と兀朮の戦いが始まります。岳飛と兀朮の成長はここまでにも十分描かれていたので、岳飛伝のタイトルに偽りはない状況でしたが、次巻からはより本格的に岳飛伝になっていくのでしょう。どちらも魅力的になっているので、間違いなく面白い戦いが繰り広げられるでしょう。

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