六神合体ゴッドマーズ 【小説版】

小説感想記12冊目

1999年、地球の宇宙進出に対して、ギシン星のズールは警告を発してきた。時同じく明神(みょうじん)タケルの身にも異変が生じた。ズールの地球爆破命令を拒否したタケルはギシン星の超能力者に襲われるが、なぜか彼も超能力を使うことができたのだ。自分の出生に疑問を抱くタケル。そして彼を守るようにして出現した六体のロボット――それらは合体して超巨大ロボットとなる。はたしてその正体は?【1巻そでより引用】

登場人物

明神タケル

クラッシャー部隊の隊員、明神(ミョウジン)タケル。地質学者の明神正(ミョウジン タダシ)が明神礁の岩山で、カプセルの中で泣く赤子を見つける。赤子を妻の静子と共に、地球人として、息子、タケルとして育てる事を決める。17歳になったタケルは宇宙関係のエキスパートが集まり、宇宙で起こる不測の事態に備えるクラッシャー部隊に入隊する。そして、人類が太陽圏外への進出を目前としたとき、タケルにまつわる事件が動き出す。ギシン星のズール皇帝は宇宙への進出をやめるよう地球に警告を発すると、冥王星開発船団を撃沈。時を同じくして、タケルは夢の中でズールから実の息子、マーズであると告げられ、送り込んだ目的である地球を破壊するように唆される。拒否したことでギシン星の超能力者から狙われるようになり、対抗するように予知や衝撃波だったりとした超能力に目覚める。自身の生い立ちや仲間と思っていた者たちからの異星人扱いに惑い迷うが、謎の声に導かれるようにゴッドマーズを駆り、地球を、仲間を、母を護ることを誓う。

マーグ

放心状態の美青年、マーグ。父親と母親を亡くしたことで気をやり、ズール皇帝の宮殿で無邪気に鳥を追いかけ回す。無害であると判断されていることから宮殿への出入りを咎めるものもいないが、実際は自らの身を護るための偽装であり、思考は極めて冷静。その正体はマーズの双子の兄で、地球に送りこまれたマーズを助けるため、ギシン星の動きを探り、テレパシーでアドバイスを送る。紆余曲折の後にマーズと再会すると、ガイヤーを守る五神を操るためのロケット(ペンダント)を渡し、本当の両親の名前を告げる。

ロゼ

マーグの副官、ロゼ。美しい容姿をした女性で、テレポートや催眠といった超能力が使える。ズール皇帝により記憶を奪われたマーグの副官となり、マーグの記憶が蘇りかける度に消し、マーズと戦うよう扇動する。故郷の星はギシン星の支配下にあり、妹はギシン星のやり方に反抗し、ロゼはズール皇帝に絶対の忠誠を誓うため疎遠となり、敵味方に別れる。

ロボット要素

ゴッドマーズ

マーズの守護者、ゴッドマーズ。ガイヤーを追う形で地球上の各地に落ちた5つの隕石。その中に眠っていた5体のロボットがガイヤーと合体し、巨大ロボット、ゴッドマーズになる。マーズが搭乗するガイヤーを中心とし、右手はウラヌス、左手はラー、右足はタイタン、左足がシン、スフィンクスはガイヤーを内蔵する形で合体する。それぞれの機体は単機での戦闘力も高く、多くの敵を相手にする場合は分離した状態で戦う。主な武装は光るGマークが触れた物を燃やす、ゴッド・ファイヤー。マーズ・フラッシュの掛け声で現れる光の剣。光の剣は近接戦の武器としてだけでなく投擲武器としても使われる。必殺技はファイナル・ゴッドマーズの掛け声とともに繰り出される斬撃。ガイヤーを地球に送り込んだギシン星でもガイヤーを守る5体のロボットの正体はわからず、合体した姿であるゴッドマーズの戦闘力はギシン星のバトル・マシーンを大きく上回る。

ガイヤー

ギシン星より飛来したロボット、ガイヤー。1982年に日本の明神礁に飛来した隕石の中に眠っていた。平時は明神礁の岩塊に埋もれているが、マーズの脳波を察知して動きだし、光を発してマーズを機体内に引き込む。動力源は反陽子エネルギー。強力なエネルギーであると同時に、地球を滅ぼすほどの威力を持つ爆弾でもある。撃破されるかマーズが死亡した場合には爆弾が爆発するようになっている。地球側では純粋な戦力とするため爆弾のみを取り除く計画も持ち上がったが、分析の結果、地球の技術力では取り除くことが不可能なことが判明する。攻撃方法は光のカッターや、生身の時と同じく超能力の衝撃波など。

コスモ・クラッシャー

クラッシャー隊が使う戦闘機、コスモ・クラッシャー。コスモ・クラッシャーは3つの戦闘機から構成されており、1号機に木曽(キソ)アキラと日向(ヒュウガ)ミカ、2号機に伊集院(イジュウイン)ナオト、3号機にタケルが乗る。攻撃時は3機に分離してトリプル・レーザーで攻撃する。

バトル・マシーン

ギシン星人のロボット、バトル・マシーン。ギシン星の戦闘員は超能力者で構成されており、バトル・マシーンに乗り込んでからも衝撃波などの超能力を使う。地球の技術力を大きく凌駕しており、コスモ・クラッシャーの攻撃では効果が薄く、まともに戦えるのはゴッドマーズのみ。

イラスト

表紙を除くイラストはアニメのカットの使いまわしです。そのため、1枚での説得力は乏しく情報量も少ないです。

1巻に限っての話ですが、アニメのカットとは別の綺麗なカラーイラストが口絵として収録されています。

2巻と3巻にはアニメのカラーカットが収録されています。本文のイラストではデザインのわからないクラッシャー隊の面々の顔がわかる唯一のカットでもあります。そして、口絵の余白にイラストの状況説明の文章が書かれているのですが、この文章というのがネタバレに全く考慮していません。そのため予備知識を持たずに読んでしまうと興醒めすることでしょう(気にする人はイラストも見ないほうが良いです)。

本作のようにアニメのカットをイラストの代わりにしている作品は以前にも読みましたが、そちらは設定集という形で各キャラやメカのデザインが分かるようになっていました。本作にはそういったものがなく、残念なことにゴッドマーズ以外のメカの形は全くわかりませんし、サブキャラのデザインもよくわからないものとなっています。

イラストでわからなくとも文章で十分だろと思われるでしょうが、詳しくは後述しますが本作の文章にそういった描写は全くありません。容姿が整っているかどうか程度の情報しかなく、具体的な描写は全くありません。メカも全く想像できません。

雑感

1巻は小説と呼べる作品ではないです。ブラウン管越しの映像を文字にしたような文章で味気ない。文字ならではの情報はほぼなく、凄く淡々とした印象を受けます。出来事しか書かれていないため文章からイメージすることも難しく、マーズとマーグの物語を除くと感情移入も難しいものでした。

しかし、2巻からは違います。文字の連続でしかなかった文章にあからさまに別の情報が乗り、感情移入も容易なものとなり、物語に引き込まれていました。作者さんのあとがきには1巻がドラマティックで2巻はそうでないといった事が書かれていますが、自分の印象は全く違います。確かに物語の内容自体は1巻の方がドラマティックなものでしたが、2巻の文章の方がより心は動いたし、より楽しめたと確信を持っています。

しかしながら、残念なことに最後まで戦闘シーンは淡白でした。ピンチになったら五神を呼んでゴッドマーズに合体する。ゴッドファイヤーで燃やす。マーズフラッシュで剣を出す。ファイナルゴッドマーズで倒す。この流れがテンプレ化しているので、驚きも何もありません。また、敵味方問わず外観の描写がされておらず、イメージができないことでアクションシーンも味気ないです。それこそ予備知識としてアニメの情報を用意しないとイメージは絶対できません。

作者さんが人間ドラマをやりたいと書いているだけあって、その部分が魅力的な作品です。他の部分の描写が淡白なこともあって、人間ドラマの主張は強く感じます。

1巻だけだと小説というより脚本といった印象でしたが、その後は見事に小説と呼べる作品になっていたので楽しめました。アニメ視聴者には追っかけに近い内容と思われるので薄いと感じるかもしれませんが、アニメを見ていない自分としては十分楽しめる作品でした。そして、読後感も良かったです。2巻は(個人的には)物語性が強く、3巻はゆっくりと丁寧に内面の描写がされていて、読み応えもあったし心に残りやすいものになっています。3巻通して見ると良い小説だったと思います。

作品データ

六神合体ゴッドマーズ
藤川桂介
本橋秀之
集英社 コバルト文庫 1982年7月 ~ 全3巻
アニメを原作とした作品でアニメの脚本家によるノベライズ作品
同アニメは漫画を原作とするが類似部分は少ない
イラストについて。2巻、3巻には本橋秀之さんの名前がクレジットされていますが1巻は未クレジット(別の人なのかな?)
イラスト枚数 1巻19枚 2巻20枚 3巻15枚







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表紙と外部リンク

六神合体ゴッドマーズ
1982年7月発売
六神合体ゴッドマーズ 2
1982年10月発売
六神合体ゴッドマーズ 3
1983年2月発売

余談

どうでもいい余談です。本作のアニメは見たことはありませんが、原作漫画のマーズは読んだことがあります。六神合体ゴッドマーズの事を指して原作ほにゃららなんて言われますが、意外と共通点が多いと思いました。もっとかけ離れたものなのかと思ったらタケルにマーズの設定は生きているし、六神合体ながらもクラッシャー隊のメンバーがロボットに乗り込まないことで、タケルに力が集約され、テイストが残っています。地球人(人間)離れという部分でタケルが苦しんでいるのは原作と同じ部分ですよね。

また、「むむむ」という台詞がある辺りにも横山光輝リスペクトを感じられてにやりとしました。心の中で「なにがむむむだ!」とツッコんだのは改めて言う必要もないですかね。

後にOVA化された外伝小説も読みました。ついでによければ。

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