新海底軍艦 巨鋼のドラゴンフォース

漫画感想記16冊目

昭和15年、広島の呉軍港に一隻の『Uボート』が入港した。積み荷はひとつ、戦艦の心臓部となる動力炉の炉心であった。当初軍部は爆弾として使うことを考えたが、複製できないことがわかると計画を断念、戦艦の動力として使うことに決定した。当時建造中の新型戦艦、その一隻に搭載が決まり、最も工事の遅れていた大和型の4番艦を『ラ號』と命名し、全く新しい海底軍艦として建造することとした。しかし、未曾有の巨漢となったラ號の建造は困難を極め、完成したときには昭和20年の夏となっていた。昭和20年8月6日、ラ號は太平洋上で米軍の海底戦艦『モンタナ』と交戦、相打ちの末に沈没。ラ號は歴史の表舞台に出ること無く泡沫の存在となったはずであった。1996年、あれから50年、人類は未知の敵との戦いが続いていたことを知る。そして50年前より戦い続けていた者は最後の大和型に再度の出撃を告げるのであった。【作中の文章を引用し改変】

登場人物

有坂鋼


中学生の少年、有坂鋼(アリサカ ゴウ)。母親は既に亡く、父親は核廃棄物運搬船、かとりの艦長を務めている。父親が乗る運搬船をラ號に助けられたことでラ號と艦長の日向に惹かれる。ラ號のクルーになりたいと願うが認められず、再度直談判を行うためにラ號に忍び込む。その後幾つかの事件を経て、装甲機動歩兵のパイロット見習いとして乗組員となることを許可される。

日向真鉄


二代目ラ號艦長、日向真鉄(ヒュウガ マガネ)。無鉄砲に見える行動も多いが打算を持ち合わせ、男気と情に溢れる性格で部下からは絶対的な信頼を寄せられる。海上自衛隊時代に鋼の父親に操艦を習っていたが、現在の所属は軍ではなく影山財閥の一員であり、影山財閥総帥からの信頼は極めて厚い。

アネット


50年前の大戦時のラ號の乗組員、アネット。地空人でありながら地球人の味方をする彼女のために、ラ號に搭載されていた一つしか使えない冷凍カプセルが使われて、長き眠りに就いた。1996年、ラ號の再出撃と時を同じくして目覚め、再度地球人に力を貸すことになる。高圧で傲慢な性格な人物が多い地空人の中では珍しく穏やかな性格をしている。

アブトゥー


アネットの双子の姉、アブトゥー。平和的な解決を求めるアネットとは根本的に考えが合わず、アネットはアブトゥーは袂を分かつ。1万2千年前地上で栄華を極めた人類の生き残りである地空人(本人たちはレムリア人と自称している)には、互いの存在を知覚できる超能力が備わっているのだが、双子であるアネットとアブトゥーは遠くはなれていても会話ができるほどに強い。便利である反面、アネットが冷凍カプセルに入ったことでアブトゥーまでも同時に眠りに就いてしまうなど、副作用の面も大きい。

ロボット要素

源兵衛(げんべえ)


五式装甲機動歩兵、源兵衛(げんべえ)。戦車に代わる機動兵器として開発が進められたが、大戦には間に合わなかった。手首と本体は本体の重量を容易に支えられる強靭な綱で繋がれており、手首をアンカーのように使うことで活動範囲を広げる。陸戦兵器であるが固定武装は特に無い。内部空間には3人同時に乗り込むためのスペースが存在する。

ラ號


大和型4番艦、海底軍艦、ラ號。全長390m、艦隊幅67m、基準排水量21万8千トン。武装面は45口径46cm砲12門、60口径15.5cm砲6門、出力の大半を使う原子熱線砲(マーカライト・ファーブ)など。1945年8月6日、太平洋上でラ號と同じラ級戦艦、モンタナと交戦の後、沈没。1969年夏頃、小笠原近海に沈んでいたところを、ラ號のかつての搭乗員である影山率いる影山財閥に密かに回収され、改修がされた。沈没から50年が経った1996年、日本国の勝利のためではなく、人類を守るために再度の出撃が訪れる。

51cm砲を積む予定であったが、戦時の日本の状況では新型砲の開発ができなかっため大和型三番艦、信濃の主砲を流用しており、名残として装甲は46cm砲にも耐えられるようになっている。動力には異種文明である地底に住まう地空人の技術が使われており、1945年の竣工時において飛行可能となっている。地空人よりもたらされた技術、零式動力炉は一度起動してしまえば半永久的に動力を供給し続ける夢の機関であったが・・・

モンタナ


アメリカ海軍ラ級戦艦、モンタナ。1945年8月6日太平洋上でラ號と交戦後に沈没。その後地空人に回収、修理される。1996年、核廃棄物運搬船かとりを拿捕。かとりを脅迫の餌とし、ラ號との再戦を日本政府に要求する。ラ號と同じく地空人の技術が使われており、1945年当時より単独飛行が可能となっている。

作画


キャラの作画には派手さがなく絵柄も一昔前のために地味に映るかと思います。しかし、漫画絵としては実に洗練されていて感情であったり状況が読み取りやすいです。


メカ(戦艦)の作画は派手です。しっかりと描かれた背景に精緻に描かれている戦艦は巨大感に溢れ、迫力たっぷりです。手抜きや妥協という言葉がどのページを見ても当てはまらず、熱量の高さが伺えます。

あくまで個人的な感覚になりますが、キャラの作画もメカの作画と同じ想いで描かれていると思います。ただ、素材が違うために地味と派手といった真逆の印象を受けます。実際はどちらも描き方(伝え方)は同じで、どちらも質の高いものです。


巻末には設定画も載っています。今回紹介したラ號とモンタナ以外の戦艦も載っていますので見応え充分です。ロボットは源兵衛しか載っていません(登場しません)のでロボットに期待するのは止めましょう。

雑感

ジャンル的にはSFだと思いますが、架空戦記のニュアンスも含んでいて、これまで触れてきた作品とは大きく毛色の違う作品なので、新鮮な読み味でした。また、実際のミリタリーの知識が乏しいので読むのが難しいかと構えましたが、注釈が多く付けられていることもあって、読む上で困ることがなく、初心者への配慮もなされています。

普段触れないタイプの作品なのに読みやすかったのにはもう一つ理由があります。物語が至ってシンプルだったためです。エンディングまで一直線で、変に凝っておらず、目的もハッキリしすぎています。これは良くも悪くもな部分でもあり、もう少し物語に広がりと波があったら別の面白さもあったと思います。

しかし、シンプルな面白さは十分なもので、物語の熱さも相まって読後の充実感は高かったです。作画も含めて質実剛健といった印象を受ける作品でした。

作品データ

新海底軍艦 巨鋼のドラゴンフォース
飯島ゆうすけ
角川書店 角川コミックス・エース 1996/6 ~ 全3巻
本作には元となるOVAがあり、OVAには元となった映画があり、映画には元となった小説があるようです(Wiki情報)つまりは一次は小説?
元となったOVAには人型ロボットは出ないようで本作と同じく派生作品であるゲーム版には出てくるようです(Wiki情報)
ゲーム版を動画で確認したところ人型ロボットのデザインは漫画版と全くの別物でした(余談情報)




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表紙と外部リンク

新海底軍艦 巨鋼のドラゴンフォース 1
1996年5月発売
新海底軍艦 巨鋼のドラゴンフォース 2
1997年1月発売
新海底軍艦 巨鋼のドラゴンフォース 3
1997年4月発売
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