DOLLMASTER 泣き虫ボー太とPAL

漫画感想記43冊目

ボー太は泣き虫の人間の少年でした。そこへ機械人形のPALがあらわれます。ふたりはすぐに仲良しになり、お互いのことを知りました。PALは人間のことを。ボー太は機械人形のことを。でもボー太は最初から持っていたのです。よい人形遣い(DOLLMASTER)になる心を。 【冒頭より引用】

登場人物

ボー太

泣き虫少年、ボー太。幼少の頃に犬を助けようとしてOVCD党と移民のデモ隊の衝突に巻き込まれ、左足を失う。OVCD党に属する父は面目を潰されたとボー太に怒り、ボー太を殺そうとしたが、祖父のパナムと同行していたPALとカルバによって助けられる。その後はクズ中のクズである父親と別れ、パナムと共に暮らすようになり、多くの教えを受ける。心優しい少年で、肉や魚を口にすることが出来ずに泣き、エニグマドールのPALを道具として扱うことも強く拒む。

パナム

ボー太の祖父、パナム。機士団に所属し、機士団では副長を務める。息子の事は見限っていたが、ボー太のことをDM(ドールマスター)の心を持つものと高く評価し、罪狩りのカルバからは幼すぎると警戒されるが、機士団にボー太を迎え入れる。首都で西京の乱が起きると、女王から呼び出しを受け、OVCDの陰謀によって命を落としてしまったため、ボー太と過ごせる時間は短かった。亡くなる前にエニグマドールのPALと一冊の本をボー太に手渡していた。

フロイ

見習い少女騎士、フロイ。血の気が多く自分勝手な性格をしており、エニグマドールを戦いの道具としか捉えない。また、上官であるカルバの命令も聞かず、ボー太に攻撃を仕掛ける。歴戦の機士であるパナムの戦いの記録こそがDMの心だと考えており、ボー太が受け継いだPALを奪いとろうとする。

ロボット要素

PAL

エニグマ式メカドール、PAL(パル)。人型ガンドールの操縦は極めて難しいとされ、セイブ・ザ・クイーンの操縦補助を目的に開発された。PALはその特性上、操縦者のクセなどを知る必要があるため、機士一人に一体のPALがあてがわれる。自我のようなものを持つため、会話によるコミュニケーションが可能。パナムからボー太に託されたPALは125番。家族を無くしたボー太の親代わりとなり、炊事、洗濯、掃除など日常の面倒を見るだけでなく、騎士の規範を説き、ボー太が立派な騎士になるよう勉強を見る。また、自分を機械として扱うようボー太に求めるが、その願いは叶わなかった。

セイブ・ザ・クイーン ボー太機

白薔薇騎士団専用ガンドール、セイブ・ザ・クイーン。既存のガンドールを大きく上回る性能を持つが、高度な操縦技術を持ってしても思い通りに扱うことが難しい。性能を引き出すには、セイブ・ザ・クイーンの操縦補佐装置であるPALが必要となる。騎(機)士は胴体部に乗り込み、PALは頭部の中に収まる。ボー太は義足であるため左足を動かせないが、PALのサポートによって操縦に苦労する様子はなく、見習い騎士であるフロイを上回る技量を見せる。

セイブ・ザ・クイーン フロイ機

フロイが駆る、セイブ・ザ・クイーン。右腕に装備する長砲はGD(ガンドール)砲というらしい。GD砲は接近戦時には打撃武器としても使われる。

作画

今作(泣き虫ボー太とPAL)のキャラは前作(彷徨の六花)と前々作(蒼穹の翼)の中間ぐらいの絵柄で描かれています。本来であれば上の画像にキャラ絵を貼り付けているところですが、今作はセイブ・ザ・クイーンの出番が多いため、セイブ・ザ・クイーンの画像でお送りします。

前作では戦闘場面がありませんでしたが、今作には多少の戦闘シーンがあります。セイブ・ザ・クイーン対セイブ・ザ・クイーンという、セイブ・ザ・クイーンファン垂涎のカットもあります。

そして、セイブ・ザ・クイーンです。作中でセイブ・ザ・クイーン祭りが開催されており大変眼福です。

雑感

DOLLMASTERシリーズ3作目になります。今作は前2作品と比べると漫画として読みやすい作りになっています。視点移動が減り、タイトルにもなっているボー太中心の話なので、シンプルでわかりやすい。また、情報が減ったことで物語の進行も比較的早いです。しかし、それでも相変わらず山場の前までしか単行本になっていないのはDOLLMASTERの伝統かもしれません(連載は続いていたみたいだけど)。読みやすさやテンポの良い進行など良い点は多くあるものの、スケールダウンしている感も否めません。前作は王国の存亡や多くのキャラに興味を持つ作りとなっていましたが、今作はボー太の物語に集中しているため他の描写が希薄です。自分でも天の邪鬼な感想だと思いますが、何事も一長一短ということでしょうか。

そして、先程書いたように山場に辿り着く前に終わっています。今作を持って(2020年4月現在)単行本になっているDOLLMASTERシリーズをすべて読んだわけになりますが、どの作品をとっても物語が完結していません。どのシリーズ作品を読んでも各作品のオチはわかないため、もやもやが消え去ることもありません。全てが未完であり、全てが中途半端と言えるでしょう。

しかし、これが世界観を紹介するための漫画だと考えれば評価は変わります。各作品で扱っている時代やキャラが違うため、各作品ごとに世界観は大きく広がり、漫画の中でしっかりと堪能できます。本作の楽しみ方は一つひとつの要素を楽しむことです。3作にも渡って構築された世界観。オリジナリティ溢れる魅力的なメカデザイン。可愛らしいキャラデザなど、魅力的な要素が多くあります。純粋な漫画として楽しむことは難しいでしょうが、魅力があることも確かです。

作品データ

DOLLMASTER 泣き虫ボー太とPAL
藤岡建機
ジャイブ CR COMICS DX 2012/1 全1巻
DOLLMASTERシリーズ3作目
黒曜石の瞳編というのあるので3作目ではないらしいが単行本になっていない







100

表紙と外部リンク

DOLLMASTER 泣き虫ボー太とPAL 上
2012年1月発売

余談(ネタバレ注意)

DOLLMASTERシリーズ最終作ということで総まとめです。

まずはボー太の話からにしましょう。冒頭、首都は984年敵の手に落ちたとありますが、この場合の敵ってなんでしょう。反乱軍? 周辺国? 大臣? OCHAZU? 単に敵と書かれても敵が何者かわからない。おそらくぼかすためにそうしたのだと思われますが。

冒頭のもう一つの疑問は、騎士が誰なのかです。最初はPALと呼ぶからボー太かと思ったのですけど、PALが多数存在するとわかったので考えを変えました。ここまでやたらと出番のあるカルバなのかな。あと、前作に出てきた見習い騎士のゼフィラの名前が出てきて、984年までは生き残っていることがわかりますね。

次の謎。パナムは外人部隊を逃すために死んだってことなのかな。前作の彷徨の六花だと女王と配下の白薔薇騎士団が反乱軍を討ったとされていたよね。パナムの所属は明確にはされていないけど、カルバがいることからも白薔薇騎士団のはず。つまり、パナムは白薔薇騎士団に討たれたということになってしまうんだけど、これはおかしい。やはり前作で語られた西京の乱の情報はネジ曲がっている気がする。というか、西京の乱がよくわからん。今作においてもぼかされたままだし、謎が謎を呼びます。

あとどうでもいい情報ですが、泣き虫ボー太と彷徨の六花だと、時系列的には泣き虫ボー太の方が前になります。ちゃんとした年代は書かれていないけど、出来事から当てはめると泣き虫ボー太は974年から始まって過ぎていたとしても1年以内のはず。彷徨の六花は980年だからだいぶ先の話です。泣き虫ボー太の冒頭の王都陥落は984年だから、冒頭だけは時系列の最新のエピソードになるはず。

残る謎はOVCD党かな。OVCD党の話は黒曜石の瞳編に載っているっぽいんだよね。この黒曜石の瞳も彷徨の六花の2巻と同じく出版予定はあったけど出ていない作品ですね。本当に未単行本化のエピソードが多すぎて理由がわからんよ。話が理解できるようにちゃんと出版してほしいです。

こうやって色々と考えてみてもわからんというのがDOLLMASTERシリーズだと思います。重要な情報は全部伏せられてます。想像して楽しむにしても、答え合わせが出来ないので寂しい。

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