ガンナーズ

漫画感想記40冊目

敗戦から半世紀。『プロゥブ』と名乗る侵略軍が、突如日本本土への進軍を開始。劣勢の自衛軍だったが、汎用人形兵器”メルカバ”の投入により防衛戦の押し戻しに成功。戦争は膠着状態に入る。そして、並静十三年。桜花高等専攻学校に通う雨午由宇の日常に静かに忍び寄る戦争の影…。戦禍の中、少年と少女の運命を巻き込む全ての始まりがそこにはあった……。 【1巻裏表紙より引用】

登場人物

雨午由宇

桜花高等専攻学校(通称、桜花攻専)の学生、雨午由宇(アマゴ ユウ)。桜花攻専は全国に10ヶ所存在する自衛官を養成する学校の一つで、人型兵器の操縦者(ガンナー)と整備技術者の育成を目的とする。軍人になるつもりはないが、自衛軍の准将である父親の顔を立てるため仕方なく通う。その他の家族は、母親は幼い頃に目の前で死なれ、妹の六花とは7年間も会っていない。母が柃の巫女であったことから、他人の死に方が視えてしまう、死視(しみ)の力(先見の眼とも)を瞳に宿す。由宇の意思に関係なく死が視えてしまうため、特注の眼鏡(がんきょう)を掛けることで視ることを防いでいる。ガンナーは訓練しても8割は適正無しで落とされるが、由宇は高い素質を持ち、整備技術者としても極めて優秀。コンピューターの扱いも得意とし、学力も全国トップクラスであるが、性格の問題で人望が絶望的に無い。また、乗り物酔いしやすいという明確な弱点を併せ持つ。

柃六花

由宇の妹、柃六花(ヒササキ ロッカ)。若くして名門、柃家の当主を務める。柃家は女系血統の家で、遠見(とも)の巫女として、信託を授ける重要な役割を持つ。柃家の巫女の言葉は国の将来を左右する金言とされる。由宇とは7年と4ヶ月も会っていなかったが、由宇と同じ下宿先で暮らすことになり、成長した姿での再会を果たす。幼い頃から由宇を強く慕い、共に暮らすようになると手作り弁当を渡すことが日課となる。六花の傍らには瑠琉(ルルウ)という狐と、身柄の重要さから十(ツナシ)中佐が護衛役として同行する。信託を授けるための神降ろしの儀を執り行う日、忍び込んだプロゥブ軍の暗殺者の手によって殺害されてしまう。

妹尾諒平

由宇の親友、妹尾諒平(セノオ リョウヘイ)。肉親にすら心を開かない由宇が異能を打ち明け、心を開いて話す唯一の相手。学校にはあまり顔を出さないため不良として扱われるが、成績はトップクラス。クラスメイトからの人望も厚く、仕切りも上手い。天才肌である由宇と近い感性を持つだけでなく、ガンナーとしても優秀。銃器の扱いにも長け、敵を見つける能力も高い。また、窮地においても冷静な判断を下せる強いメンタルの持ち主。

旭母聖

諒平と由宇の先輩、旭母聖(コクモ ヒジリ)。諒平に惚れこみ、諒平が好むであろう賢い女を演じる。諒平と由宇以上に世界の現状を知り、二人の手助けを行う。

真壁

由宇の学友、真壁(マカベ)。ある日を境に性格が急変し、一家全員で失踪したと噂が流れる。しかし、失踪しておらず、学校にも久しぶりに出席するが、学校に現れたのは由宇の命を奪うためであった。六花のクラスメイトの女学生、足立(アダチ)と手を組み、六花を稲田媛(クシナダひめ)と呼び、由宇と六花の命を狙う。六花によるとその正体は男女二人組の暗殺者、留裴亜(るべあ)と留裴亜(トベア)とのこと(漢字は同じでルビだけが違う)。

ロボット要素

四式戦砲

都市決戦用汎用人形兵器、四式戦砲。またの名を、メルカバ。プロゥブ軍との開戦から九年の時を経て完成を見た、自衛軍の人型兵器。並静九年には群馬県の前橋までプロゥブ軍の侵入を許していたが、メルカバの登場によって新潟県と群馬県の県境まで戦線を押し戻すことに成功。設計は三蔆(みつびし)重工の専務、百海歳三(ドウミ トシゾウ)が中心となり、タマ精機の白崎ら、そして当時11歳の由宇も加わる。動力は最高機密の位相変換器(P・C・G)。全身は記憶合金製の骨格筋で構成され、足回りには大型タイヤを左右の脚に2本ずつ、テールアンカーにも大型タイヤが2本付く。計6本の大型タイヤと複数の小型タイヤで移動速度と安定性を両立する。主武器は27mmガトリング砲、オール・ガン(All Gun)。通称は、オルガン。オルガンはパラキートの電磁シールドを撃ち破ることを目的に開発され、メルカバはオルガンを運用するための機体と言える。機体の背中にはオルガン用の大量の弾薬、バスドラム弾倉を背負う。近接用の武器はなく、随伴兵との運用が基本となる。

第九戦砲大隊所属のエースパイロット、赤神(シャクジ)大尉が乗り、最も厚いとされる胸部の装甲に穴が空き、右腕は消失した大破したメルカバが、教官の時風(トキツカ)によって桜花攻専に運び込まれる。大破したメルカバは由宇と諒平を中心とした学生たちにより修復され、百海歳三の提供で最高機密の位相変換器を組み込まれる。神降ろしの儀当日、プロゥブ軍の奇襲に対応するため、大破から蘇ったメルカバは戦場へと舞い戻る。

パラキート

プロゥブ軍の戦砲、パラキート。戦砲とは市街戦闘に特化した人型兵器のことを指す。Battle Barrel (バトル バレル)、B・Bとも表記される。プロゥブ軍とはボツダム宣言後にソ連によって占領された北海道を基点にして攻め寄せた侵略者。昭和六四年に本土へと進軍。自衛軍と在日米軍に多大な犠牲を強い、最も脅威となったのがパラキートである。パラシートを強力たらしめるのは左腕に装備した電磁シールドにある。物理攻撃の殆どを無効化し、誘導兵器のレーザーを撹乱してしまう。唯一の弱点は同一場所への連続した攻撃。

シオマネキ

プロゥブ軍の新型BB、シオマネキ。たったの6輛で第九戦砲大隊所属のメルカバ20輛を破壊せしめる。電磁シールドはより強固なものになり、新たに実用化され超電磁砲(レールガン)を装備する。メルカバとの性能差は大きく、自衛軍では五式戦砲の開発を急ぐ。

作画

メカの作画はとにかく緻密。派手さは感じない絵面ですが、描き込み量は多く、丁寧で細かい。

キャラの描き込みそれほどありません。銃器などとの対比を意識しているようにも感じます。

キャラの作画に派手さや艶といったものは殆どないのですが、唯一の例外が作中後半に出てくるキャラになります。

雑感

本作を一言で表すなら地味、になります。キャラデザは地味。メカデザも地味。作画も物語も派手さに欠け、パッと見で惹かれるキャッチーさはどこにもない作品です。ただし、つまらない作品かと聞かれたら、間違いなく否定します。本作は面白い。引っかかる表現にするため敢えて地味という言葉を使いましたが、ポジティブな言い回しをするならば硬派と表現される作品です。全ての要素に派手さは感じません。しかし、要素の一つひとつはとても丁寧に構成されています。作画の項でも使った言葉だけど、作品全体が緻密です。派手ではない要素と、要素と、要素と、要素が組み合わさった作品です。

作品のジャンルは架空戦記になるでしょうか。実在する場所が舞台となり、緻密な作画の背景と合わさって非現実ながら日常感があり、日常をひっくり返すことで戦場が出現します。作中の頭から世界観は存分に表現されていますが、読み進めるごとに世界観の理解が進み、4巻まではスローペースに感じるほどゆっくりと描かれています。しかし、4巻以降は話が加速し、最終巻である6巻は説明に多くの時間を割き、殆どの謎の答えを明かします。なぜ加速したかというと、本作は打ち切り作品だからです。流れを加速させず多くの謎を残して終わる作品もありますが、本作は謎の多くの答えを明かし、物語の行き着く先までファンサービスで書かれています。作者さんの優しさから多くを明かしたと思われるのですが、前のめりになっていた自分としては同時に残念に感じました。これだけ面白い作品なのにもう続きが読めないのだと実感せざるを得なかったためです。

本作は触れることでしかポテンシャルを感じることが出来ない作品です。極一部を除いて全くキャッチーじゃない。だから、こういうところがオススメと中々表現でない。そして、スローテンポなので序盤の方だけでは魅力が伝わらないかもしれません。全6巻と短い作品なので、覚悟を持って最初から最後まで読んでください。打ち切り作品なので消化不良感は残りますが、6冊でも結構満足ができるはずです。確実にどこかに面白さは感じれる作品だと思うので、面白い作品が読みたい人は読んでください。

作品データ

ガンナーズ
天王寺キツネ
角川書店 角川コミックス・エース 2012/4 ~ 全6巻







100

表紙と外部リンク

ガンナーズ 1
2012年4月発売
ガンナーズ 2
2013年4月発売
ガンナーズ 3
2014年2月発売
ガンナーズ 4
2015年1月発売
ガンナーズ 5
2016年2月発売
ガンナーズ 6
2017年4月発売

余談(ネタバレ注意)

ネタバレありきで余談を書いていきます。暇だったら付き合ってください。

実は今回読むのが初めてというわけではありません。以前に1巻か2巻ぐらいまでは読みました。その時は地味に感じ、あまり面白く感じませんでした(普通程度かなと)。しかし、感想でも書いている通り今回は凄く面白く読んでました。以前は読んでいない3巻から面白く感じたというわけではなく、物語の頭から楽しめた。以前はロボット漫画をとにかくいっぱい読もうとしていた時で、今回のように丁寧に読もうという心掛けが良くなかったのでしょう。

このよくわからない感想記の目的は一つひとつの作品とちゃんと向き合うためです。だからこそ今回改めて感想記をやって良かったと思ったわけです。面白い作品に出会えたことと、感想記の意味を実感できたのは自分としては本当に嬉しいことでした。

そういえば、本作は結構変わった作りになっています。物語や世界観だけの話だけではなく、表紙を外すと裏におまけ漫画が載っていたりします。中表紙におまけが載っている作品は結構あるんですけど、表紙の裏に書かれている作品は少ないので、チェックしていない人は気を付けてください。6巻のエピローグについては作者さんが触れているので気付く人も多いと思いますが、他の巻にもちゃんと載っていますよ。

さて、作品の話しに戻りましょう。本作最大の謎はどのタイミングで打ち切りが決まったかです。5巻は加速であると同時に物語の進行でもありますが、6巻の諒平の弟の死は間違いなく分岐点か分岐後ですよね。打ち切りが決まっておらず、もっと長い連載の作品だったとしたら6巻の展開は別のものになっていたのでしょうか。諒平の死は避けられたのでしょうか。もしくはもっと後に死ぬ予定だったのか、個人的にはすごく気になりました。

本来なら諒平の死ぬタイミングはもっと後になるよね。諒平の代役が出てきていないので、架空戦記の様相を呈するならば駒が足りなくなってしまう印象です。貝原は代役には弱いし、鏑木も別方向に弾ける感じだろうし、役割的に違う気がします。

あと、由宇の弾ける姿があまり見れなかったのも残念かな。眼鏡を外した後からが本番だったと思うので、死が視えることによる読み合いバトルも見たかった。物語が順調に進んでいたら由宇は指揮する側にもなっただろうし、そ戦記物の部分も楽しみたかった。

作中の謎ではP・C・Gも伏線ですよね。P・C・Gの技術は未来人から手に入れたものでしょう。情報が開示されるという発言からも、現在進行系で未来人が関わっていることを示唆しています。シオマネキの出現で情報の開示レベルを上げたという感じでしょうか。で、その消極的な関わり方から神流派の人間であることが伺えます。オロチとスサノオの対立だけでなく、神流派と背反派の争いも見ものになったでしょう。

こうして振り返ってみるとやっぱりポテンシャルが凄いです。まだまだ楽しみな要素がいっぱいあります。スロースタートだったり、人を遠ざける作りだったのかもしれませんが、長い目で見れば相当凄い作品になったんじゃないかな。

色々とまだまだ書けそうだけど、面白い作品が読めてよかった、で締めます。お付き合いありがとうございました。

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