ヘヴィーオブジェクト 【漫画版】

漫画感想記11冊目

地球の隅々までが開発され、月にも進出している近未来。21世紀に国連が崩壊した後、人々は思想や宗教等をもとに再編された連合国家のうちのいずれかに属し、日々闘いを続けていた。旧時代の闘争と違うのは、戦争の帰趨を決する要素が超巨大兵器オブジェクトに一本化されたことである。――オブジェクト同士の戦いに一変して久しい時代、アラスカの地でオブジェクト同士の戦いを一変させる事件が起きようとしていた【44ページより引用して改変】

登場人物

ミリンダ


超巨大兵器オブジェクト、ベイビーマグナムの操縦者、ミリンダ。オブジェクトを操るには特殊な条件が存在し、それら条件を満たすオブジェクト操縦者はエリートと呼ばれる。感情表現が乏しくどこか読みにくい部分もあるが、年(見た目)相応の少女である。近しいものからはお姫様の愛称で呼ばれる。

クウェンサー


平民出身の派遣留学の学生、クウェンサー。オブジェクトの勉強として戦地であるアラスカに来たが、出世コースに乗るためには3年間務めることこそが重要であり、勤務態度はかなりいい加減なもの。損な役回りを避けることから性格はこすっからいとが評されるが、胸の内には熱いものが存在し、頭の回転は早く洞察力にも優れているため機転が利く。

ヘイヴィア


貴族出身の軍人、ヘイヴィア。貴族地位を守るための従軍の箔欲しさに入隊した模様で、勤務態度は良くない。クウェンサーと軽口を言い合い、軍機違反を共に犯す悪友である。クウェンサーに負けず劣らず頭の回転は早いが、立ち回りは些か不器用。

フローレイティア


クウェンサーとヘイヴィアの上官、フローレイティア。アラスカの戦場に居ながらにして、太平洋の戦場など複数の戦場の遠隔指揮も受け持つ。その豊満な胸から陰ではおっぱいと呼ばれる。見た目や立場に反して弱冠18歳である。

ロボット要素

ベイビーマグナム


超巨大兵器オブジェクト、ベイビーマグナム。全長50m。主砲7問に大小様々な砲門を各所に装備した全身火薬庫であり、核攻撃の直撃にも耐える数百層の装甲に覆われた堅牢な要塞。あらゆる環境で活動できるのが強みであると同時に、特定の環境下で強みを発揮できない、旧世代にあたる第一世代のオブジェクト。

ウォータースライダー


氷雪地帯特化型第二世代オブジェクト、ウォータースライダー。静電気を発生させた4本足で、起伏の激しい雪上をアメンボのように滑走する。主武装はプラズマ砲6門。その他全身各所にレイルガン、レーザービーム、コイルガンなどを備える。脚部の損耗が激しいオブジェクトのため、補給基地には予備部品が大量に用意され、半日ごとに交換される。

作画


キャラの作画の質は高いです。現代的な絵柄で清潔さが感じられ、女性陣には可愛らしさだけでなく多少の艶っぽさもあって魅力的です。


メカのアクションシーンはもかなりのもの。エフェクトが凝っているので迫力もあるし、サイズ感もかなり出ています。


メカと人のバランス、見せ方の部分がかなり上手い。オブジェクトの異物感は出しつつも絵面にしっかり溶け込ませているので、読む上での違和感はまるでないです。作画の質は総じて高く、作画面での不満はまず間違いなく憶えないでしょう。

雑感

実は原作小説の1巻は読んだことがあります。記憶はかなり薄れてますが、小説原作の作品を実に上手くコミカライズされている印象の本作です。薄れた記憶でも全く問題なく楽しめる作りになっているし、原作の小説を初めて読んだ時の感覚に近いソレを覚える漫画になっています。

原作1巻を読んでいる時に感じたことは、戦争ごっこ、ということです。主人公の主観でほぼ書かれ、顔のない敵と戦い、顔のないオブジェクトを倒す。人を殺すことの呵責もなければ、戦場の緊迫感もない。主人公とその仲間が軽口叩きつつ、人の力では敵わないはずの巨大兵器オブジェクトを奇策を講じて倒す。ライトな戦い、ライトな戦争。そんな感じでした。

こう書くと軽すぎと思われるかもしれませんが、これはこれで面白いと思いました。何故なら重苦しく書かれていればそれが実際の戦争、戦場なのか分かるわけがないからです。もしかしたら実際の戦場もライトなものかもしれません。ましてやフィクションなのですからどのように書こうと作者の自由というものです。ちょっと複雑な感情を抱きつつも原作小説の1話、2話と楽しく読みすすめました。しかし、問題は3話です。愕然とするほど安っぽい茶番劇を見せられてげんなりとしました。それまでは顔の見えないライトな戦争劇として楽しんでいたというのに、急に安っぽいリアリティをもたせた茶番劇を挟まれてどんな気持ちで楽しめというのだよと憤ったものです。

でも、ご安心。本作で描かれているのは原作小説の1話だけです。独特な世界観を質の高い作画とわかりやすい構成で楽しく読めます。

作品データ

ヘヴィーオブジェクト
犬江しんすけ
メディアワークス 電撃コミックス 2011/5 全1巻
小説原作のコミカライズ作品で別作者によるコミカライズもあるが本作の続きからとなっている



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表紙と外部リンク

ヘヴィーオブジェクト
2011年5月発売
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